百三十七話 謎の肉塊
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「お、お命ばかりはお助けを!!」
「いいぞ。問いにしっかりと答えるなら生かしてやる。その前に脇差を捨てて鎧を外せ」
「は、はいぃい!!」
取り残された男を武装解除させている間に投げた鉄棍を回収して鎖付き分銅を仕込み直した。
エタケ達の後を少しでも追うために男を先に歩かせる。
背に鉄棍を突きあてて脅しながら尋問を開始した。
「お前たちはどこから来た? 所属は?」
「お、おれ、いや、私たちはアワ国の国府軍です!」
「大将のマサードが複数人も居るのはなんでだ?」
「わ、わかりません! 私たちの軍にも主上はずっといらっしゃったのですが、2日前にカズサの軍と合流したらその時に向こうにも同じ顔の主上がいらっしゃいました!」
なんだそれ。
つまり一国に一人はマサードが居たってことか?
だがそれが本当ならマサードがバンドーを制圧したのが早過ぎた理由にも説明がついてしまう。
バンドー八国で合わせて八人居るとか無茶苦茶だぞ......。
いや、ムサシはオキヨ様が同調しただけで侵略はされていないから七人?
うーん。不確定だから決めつけはよくないか。
八人以上居ると考えて事に当たった方が良さそうだ。
「お前たちの目的は?」
「征伐軍の排除と皇京への侵攻、神皇の抹殺です!」
「なんだと!? それを聞かされたうえで自分の意志で参加したってのか!?」
「ひぃいい! そ、そうです! 役人どものの汚職は目に余るので神皇に責任を取って頂きます!!」
怯えているのにはっきりと大胆な事を言う。
矛盾しているような気持ち悪さがある。
こちらから表情が見えないだけに余計に不気味だ。
ふーっと大きく深呼吸をして心を落ち着ける。
ここまで素直に話すやつならついでに他に気になっている事を聞き出せるかもしれない。
「お前たちが下っ端がほとんど魔法を使わないのはどうしてだ?」
「毎日主上に魔力を捧げているからです!」
「魔力? 命素ではなく?」
「はい! 魔力です! 真なる皇で在らせられる主上は魔力を吸う事が出来るのです!」
いや、他人の魔力を取り込むってなんだよ。
人間じゃないだろ。
ヤシャが言っていたマサードに力を与え過ぎたってのはこれら一連の能力のことか?
化け物が化け物を作りやがって......。
「それよりもどうしてお前はそんなに素直に喋るんだ?」
「......」
「おい?」
「......」
「どうした? こっちを向け」
不意に無言になった目の前の男の肩を掴んでこちらを向けると男の顔には目玉の付いた肉の塊のような得体の知れない何かが張り付いていた。
「あひゃひゃひゃひゃ! バレちゃった! バレちゃった!」
「うおっ!?」
急に肉塊が声を発したので跳び退って距離を取り鉄棍を構える。
肉塊は男の顔を覆いつくしており男自体の呼吸などがどうなっているかは分からない。
「何者だ!?」
「お前を見に来たんだよ! 既にここまで力を得ているか! 忌々しい! やはり接触して正解だった!! 遠くから見ただけでは分からなかったからな! もっとお前を知りたい! 知り尽くしてから喰い殺してその力を奪ってやる!」
「もう二度と会わねぇよ!」
鉄棍の一突きで男の頭ごと肉塊を貫いた。
しかし男の頭からは血が噴き出る事は無かった。
既に頭部とは一体化してしまっているのだろう。
「利かない! 効かない! キカナイ!」
「チッ!」
「......あぁ? あああああああああ!? なぜ? 焼ける! ヤケルヤケル!!!!」
「!?」
貫かれた直後は平然としていた肉塊が徐々に苦しみ始めた。
なんだ? 何が起こった?
「グァアアア! 貴様らはヤツの血が濃すぎる為に雷しか持たぬはず! ナゼダ! なぜ陽を使える!?」
「俺にもさっぱり分からんがそのまま死んでくれ!」
鉄棍を握る力を緩めることなく、煙が上がって苦しむ肉塊を睨みつける。
恐らくだが中に仕込み直した矢が未だに付与された陽属性の魔力を残していて、それが鉄棍の外側にも伝わっているのだろう。
妖魔になったハルアを鉄棍で殴ってもこんなに効果はなかった。
この肉塊はよっぽど陽属性に敏感なのだと思われる。
「クソっ! 貴様は心も読めぬ! こんなハズでは!」
「心を読むだと!?」
「ソウダ! 戯れに先ほどまでの問いに対する答えは全てコイツの心を読んで答えてやっていたのダ! 全て真実ダ!」
「そりゃどーも。だがもう用はないからさっさと退場してくれ」
心を読む魔法? なんだそれ。
陰魔法にはそんなものもあるのか?
コイツの言動はどうにも胡散臭い。あとでミチナ様に聞いてみるか。
「コウナレバ、已むを得まい」
「!!?」
肉塊から不意に威圧が放たれた。
一瞬だけ、ほんの一瞬だけだがあのヤシャの殺気を超える力を感じて跳び退いてしまう。
胸が熱くなり、気付くと聖痕が青白い光を放っていた。
「マタ会おう。我が子よ」
「!? 待て! どういうことだ!?」
再び鉄棍を突き刺そうとしたが、肉塊は吸い込まれるように消えてしまった。
捕虜にした男は首から上が消え去り、身体だけが残されドサッと倒れる。
ヤツが消えると聖痕の光も治まった。
「なんだったんだよ......アイツは」
呆然と立ち尽くしていると征伐軍の方から淡黄色の月毛馬に乗ったサダ姉がこちらへ向かってきた。




