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セイデンキ‐異世界平安草子‐  作者: 蘭桐生
第一伝:幼少期~バンドー叛乱編~

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百二十一話 戦いの夢

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 まるで重力が無くなったかのように身体が浮遊している感覚がある。

 起きているような寝ているような不思議な感じ。

 夢だと分かっているのに覚めてくれないという経験をしたことがある。

 その時と同じだ。


「なんだアレ……」 


 眼前にはこの世のものとは思えない光景があった。

 山を超えるほどの巨大な化け物と和洋様々な装備をした戦士達が戦っているのだ。


 化け物の方は下半身が蛸? いや、蛇のような胴体が2本で蜷局を巻いているのか。

 上半身は人のようだが、腕は鱗に覆われ指先はそれぞれに蛇の頭がついている。

 本体の瞳からは炎が上がっており、背には巨大な翼がある。


 戦士達の装備は鉄や革の鎧を着けている者も居れば、一枚布の服など軽装の者たちもおり、武器は両刃の剣や三又の槍、金剛杵などを持っていて、西洋・東洋の文化が入り乱れている様に見える。


「すごい......」


 戦いは苛烈にして壮大で、小さな山が消し飛んだり、逆に地に巨大な穴を穿つ程の攻撃で新たな山が生じたりと、普段俺が目にするようなものとは規模が違い過ぎる光景が繰り広げられている。


「あ......」


 戦闘により傷付き倒れる仲間も出る中で、先頭に立つ革の胸当てを付けた男は右手に凄まじい光を放つ雷を生じさせた。

 それを投げつけると化け物は段々と縮んでいき最後には石の塊のようなものへと変化した。

 それはまるで卵のようにも見えなくもない。

 

 ちらりと見えた雷を投げ放った男の横顔はどことなく爺ちゃんや父上、キント兄に似ていた......。

 その男と目が合った瞬間、グンと真上に引っ張られる感覚が————


 ハッとして目を開くと見知らぬ天井があった。


 不思議な夢を見たような......。

 夢の記憶は朧げで何を見たかをつぶさに思い出すことは出来ないが、どこかの戦いの夢だったことだけは何故か分かった。

 

「お。ツナ、起きたか!」

「キント兄......?」


 声の方に頭を動かすと大鎧に身を包んだキント兄が木の床に胡坐をかいてこちらを見ていた。

 一瞬焦ったが、キント兄の姿が特に変わりなさそうなことからまた数年間も眠っていたわけではなさそうだと安堵する。


「……」

「戦場から戻ったら血だらけで動かないツナが治療をされてたのには焦ったぜ!」


 キント兄たちの方も戦いは終わっているようだ。

 嘘の付けないキント兄のこの明るさからして全員無事だったのであろうと推測する。


「サダとエタケが血相変えてツナに飛びついて怒ったり泣き喚いてよ、父上から冷静になれって頭に拳骨を貰ってた。あの二人が殴られるところなんて初めて見たぜ! ははは!」


 俺の身体は治癒魔法の効きが悪い。

 そんな俺が血だらけだったのだから姉妹が慌ててしまうのも無理はないだろう。

 つい最近まで3年も眠っていたことで迷惑を掛けたばかりだというのに、また家族たちを心配させてしまったようだ。


「そんなことが......。あっ!! コゲツ! コゲツはどうなった!?」

「コゲツ? 特になんもなかったと思うけど何かあったか? あ、いいや。俺だけ聞いても分かんねえだろうからとりあえず先にみんなを呼んでくるぜ!」


 無事なのか......。良かった。

 何にもなかったと聞いて、濁った魔力の影響やその前にあった大ケガなども消えているようで安心した。


「あ、待って! アレから俺はどれくらい寝てた?」

「ん? ああ、ツナが倒れて2週間くらい経ってるんじゃねーかな? もう新年を向かえたぜ」

「ええええええ!?」


 キント兄の鎧姿から眠っていたのは2~3日くらいかと予想していたがどうやら思っていたよりも時間が経過していたようだ。もはや年単位や月単位ではなかっただけマシと思うしかない。

 マサードの反乱はどうなったのか、皆は無事なのかと色々考えているうちに俺の寝ている部屋へ父上、キント兄、サダ姉、エタケとミチナ様が入って来た。

 俺が寝かされているのが三畳程度の広さの部屋なので五人も入ってくると流石に狭い。


「ツナ。やっと起きたか。また数年も眠るのかと肝が冷えたぞ」

「父上、ご心配をお掛けして申し訳ありませんでした。ところでミチナ様にはもう私の事をお話に?」

「ああ、聞いたぜ! お前は数奇な星の下に生れたようだな! なに、心配するな。先のお前との約定通り一切口外はせん。それよりも本当にうちの娘婿に来ねぇか? 口外こそせんがこんな面白い奴を放っておく気にはなれねぇぜ」


 ミチナ様はどうやら先日の約束を守ってくれるようだ。

 また婚儀の話を持ちかけられたところでサダ姉とエタケがムスッとした表情になって口を開いた。


「ミチナ様。ツナはまだ病み上がりですので、そういった心労の掛かることはまた折を見てからになさって下さいませ」

「今はそれよりも何があったのかを聞くことが肝要かと愚考致します」


 姉妹二人の圧に父上が蟀谷に右手を当てて溜息をつき、ミチナ様は苦笑しつつも頷いていた。


「ははっ、そうだな。何があったのかを申せ。後を追わせた者には可能であればツナの加勢をと命じていたんだが、お前と戦っていたのが手の付けられないほどの化物だったってんで報告と増援要請に一旦戻って来ちまってな」


 あの場でのことは特に誰かに見られていなかったらしい。

 それならばなるべく詳細に話したほうが良いかと思い、ハルアが父の仇としてキキョウを狙ったことや、妖魔化した原因となった魔術具を魔神に与えられた可能性、コゲツが濁った魔力にあてられてしまったことと俺の聖痕が浄化してくれたかもしれないことなど、あの場で俺が知り得たことと推測は包み隠さずに話した。



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