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セイデンキ‐異世界平安草子‐  作者: 蘭桐生
第一伝:幼少期~バンドー叛乱編~

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九十八話 ヤスマの謝罪

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 (うまや)の裏に声を掛けると建物の陰から狩衣を着たヤスマ殿が現れた。


「おや、気付いておられたか。しかし盗み聞きではなく偶然なのだ。就寝前に愛馬を撫でようかと思ってやって来たところ、偶々会話が聞こえて来たので邪魔をするのも悪いかと終わるのを待っておったのだ」

「はぁ。そういうことにしておきましょう。それで? 出て来てくれたということは俺に何か御用ですか?」


 ヤスマ殿と話すのは久しぶりだが、以前は明るく真っ直ぐなだけの男性という印象だったが数年ぶりに会話した彼は少し雰囲気が変わっているようだ。


「我が弟が多大な迷惑を掛けて大変申し訳なかった!」


 ヤスマ殿は勢いよく土下座して謝罪を述べた。

 つい先ほどの腹芸を行った彼とはあまりの違いに一瞬彼が何をしているのか理解が追い付かなかったほどだ。


「あ、頭をお上げください! 俺に謝罪は不要です。謝るならサダ姉様に......いや、もう何度も謝罪なさったことだと思いますし、さっきので姉様も一皮剥けたことでしょうからもう誰にも謝罪は必要ありませんよ」

「だが!」

「それに赤子の(みぎり)とはいえ瓜二つの実弟と離れ離れに過ごしていたことを知って、しかもその弟が再会するや否や亡くなってしまったんですからヤスマ殿もさぞかしお辛かったでしょうに」


 そうだよ。ヤスマ殿も被害者みたいなものじゃないか。

 さっきのサダ姉の話を聞いてミチナ様に少しだけ思うところはあったけれど、他のテミス家の面々には寧ろ家族を亡くした事への同情しかない。


「いや、双子の弟が居たことはもっと以前から知らされていた。そしてあの時に皇京に居たことも偶然ではないのだ。サダ殿の縁談の話を聞いた母上からジワラ家に探りを入れるようにと命じられて、ヤススが拠点としている周辺を探っていたのだ」

「なるほど。ミチナ様も袴垂(はかまだれ)の正体には気付いていたんですね。それでもよりによってヤスマ殿を遣わせるとは」

「いや、自ら志願したのだ。自分と同じ顔をした人物が悪逆を働いていることが許せなかった。それが実弟であるならば猶更! 遭遇したのは偶然だったが我が弟ながら手強く、負傷していなければ私が負けていた可能性すらあったかもしれん」


 サダ姉よりも強いと言っていたからな。

 以前の腕比べで互角にやりあっていたヤスマ殿も苦戦したのは想像が出来た。


「ヤススが負傷していたのはコゲツ殿のおかげ。つまり私はトール家のおかげで命拾いしたわけだ」

「はぁ。まあ、そういう見方も出来るかもしれませんね?」

「その恩義を返させてほしい!」


 ああ。こっちはこっちで罪悪感が拭えないのか。

 事を起こしたのが自分と同じ顔をした人物だったからヤスマ殿は余計に罪の意識を感じているのかもしれないな。

 いくら俺やサダ姉、例え父上がヤススの件はテミス家とは関係が無いと力説した所で無駄なのだろう。

 というか父上でなく俺の所へ来た理由も他の家族からはもう既に終わったことだと断られ続けたからだったりするか?

 今の命拾いの話も何でもいいから理由をつけて何かしら俺たちに助力することで自分の中の罪悪感を消したいに違いない。


「そういう事でしたら今回の防衛戦で力を貸していただければと——」

「いや! それは出来ぬ! 此度は助力に来てもらったのは我らの方だ! 協力するのは当然の事ではないか!」

「わ、わかりました。じゃあ今後もし手が必要になった際には是非お力添えください」

「承知した! その時は何でも任せてくれ!」

 

 ヤスマ殿は満足げに何度も大きく頷くと寝所の方へと去って行った。

 

 いやいや、愛馬を撫でる為に来たとかいう建前を忘れてるじゃないか。

 贖罪のはずなのに強引なんだよ......。その辺はやっぱりミチナ様の子って感じだな。


 まあ、いつ何があるか分からないからな。

 手を借りるアテが増えるのは良いことだ。

 それに「今後」と口にしたということはヤスマ殿もこの戦いで負ける気など無いことが十分に伝わった。


「じゃあ俺も負けないように黒鉄兵への対抗策を練りますかね......」


 俺は独り言ちるとトール家の男性陣に宛がわれた寝所へと戻った。



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