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セイデンキ‐異世界平安草子‐  作者: 蘭桐生
第一伝:幼少期~バンドー叛乱編~

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九十六話 尋問

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「ミチナ様、捕虜が目を覚ましたとお聞きしました。あの件はどうでしたか?」

「うーむ。残念ながら正気だったぜ。マサードの近くにいた兵は自らの意思で着いて来ているのは間違いなさそうだ。そのせいで口は堅いがな。拷問してでも何か情報を持っていないか吐かせるつもりだが、その前にツナは直接話しておきたいか?」


 あの件、つまり陰魔法による洗脳ではないかという疑いだったがマサードの部隊を構成している兵は正気でマサードに仕えていると考えていいらしい。


 自らの意思で戦場に出ているのなら命を奪う事に遠慮は要らないが、魔神の関与についてだけは聞いておこう。


 俺が頷くとミチナ様は父上と俺の三人で鎮守府の地下にある牢屋へと連れて行ってくれた。


「人払いは済ませてある。殺したり拘束を解かない限りは自由に聞いてくれて構わねえ」

「ありがとうございます!」


 この世界で捕虜の扱いがどうなっているのかは知らないが拷問に掛けてでも口を割らせようとしている相手ならば俺も遠慮は要らないだろう。

 前世の漫画で見た悪役ムーブでもしてみようかな。

 鉄格子の向こうで拘束されている捕虜となった男に声を掛ける。


「こんばんわ。おじさんの名前は?」

「へっ! 誰がオメぇみてえなガキと話すかよ!」

「へっ! 誰がオメぇみてえなガキと話すかよ! って名前なんだ。素敵な名前だね。ところでマサード殿って頭おかしいよね?」

「おちょくってやがるのか!? マサード様を馬鹿にするたぁ! 許さねぇぞ!」


 あー。今のでなんか色々理解した。

 もう少し揺さぶって情報を引き出すために子供がしそうにない態度で意表を突いてみようか。


「テメェこそマサード殿を馬鹿にしてんのか!? 真皇を名乗ってんだからテメェらが呼ぶべき敬称は主上や帝だろうがこのデコスケがよ!!」

「!!?」

「本当はマサード殿が皇を名乗ることに納得してねえんだろ?」

「ちがっ、俺は......」 


 マサードに対する忠誠は本物だけど、真皇を名乗る事には納得していないとかそんなところかな。


「実はマサード殿は誰かに操られて正気を失ってるんじゃねえか? もしくはムサシ守オキヨ・アプロ様に薬でも盛られたか? そうだとしたら俺たちはマサード殿を助けてやりてえんだ」

「違う! マサード殿は正気だ! 確かに反乱を考え始めたのはヤシャとかいう変な女と会ってからだが、俺たちとはいつも変わらずに毎日接してくれている! それに悪いのは悪徳貴族共を好き勝手させている帝、いや、神皇の方だ!」


 変な女......そいつが魔神かな。ヤシャという名の女なのか。

 魔神と出会って以降に反乱を企てるようになったというのは大きな情報だな。

 

 唆されたか、見た目に分からない洗脳か、何か力を与えられたか。

 ......後は人質でも取られたか?

 

 正直なところ俺もジワラ家に政権の殆どを握られている今の神皇に思うところはあるが、それはそれ、これはこれだ。

 この後はバンドーでの悪徳貴族共の所業や罵詈雑言ばかりになって聞いているのが疲れた。

 そりゃ反乱も起こしたくなるわな。と思わなくもないが、これ以上は時間の無駄だと思ったのでミチナ様に礼を告げて立ち去った。

 名前を名乗ってくれなくて助かったわ。

 そうだったらこの後に拷問を受ける彼に同情してしまうところだ。


「ツナ、先ほどは見事に重要な情報を引き出していたが、それもあちらでの知識からか? それに随分と乱暴な口調だったが......まさかさっきのが素のツナだったりするのか?」


 父上が心配そうに尋ねてきた。

 尋問に立ち会わせるのは承知したとはいえ、さすがに俺の豹変したような演技は想定していなかったようだ。


「いえいえ! そんなことないですよ! 口調はあちらでの創作話、絵巻みたいなものでそういう人物が使っている言葉を真似しただけです! 素の状態は爺ちゃんと話している時が一番何も飾ってないですね」

「そうか......」


 慌てて否定すると父上は少し悩んだような顔をしたが「ご苦労だった。しっかりと休めよ」と言って再び地下牢の方へと戻って行った。


 夕餉を終えて寝る前に軽くコゲツのブラッシングでもと厩へ向かうとサダ姉がコゲツを藁束で撫でてやっていた。


「あ、やっぱりツナも来たわね。来ると思ってたわ」

「ええ。コゲツにはいっぱい助けてもらってますからね」


 俺が皇京から持ってきていた特製の猪毛ブラシでコゲツの頭を撫でるとコゲツは目を瞑ってムフーと鼻息を吐いた。


「ちょっと。コゲツ、妾が撫でてやっている間はそんなに気持ちよさそうな声を出さなかったじゃない! ズルいわよツナ。妾にもその櫛を寄こしなさいよ!」

「ズルいってなんだよ。まあ、貸すくらいなら良いけどさ」


 櫛じゃなくてブラシだけどと訂正するのも面倒だったので、サダ姉の藁束と猪毛ブラシを交換してコゲツの翼や足、背中などを満遍なく撫でてやると満足そうな表情でコゲツは目を細める。


「今朝の話、ツナが眠ってる間に何があったか聞かないの?」


 サダ姉が唐突に気になっていた話を切り出してきた。



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