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青春時代の歳の差なんて~中高生の歳の差恋愛物語~  作者: 九傷


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第64話 教室で悶々とする (藤原 茉莉花)



 私の名前は藤原 茉莉花(ふじわら まりか)

 豊穣学園の風紀委員で、副委員長の肩書を持つデキル女かつ美少女である。

 しかし、周囲には秘密だけど、実は私は筋金入りのオタクだったりする。

 あと、ついでに若干腐っている。


 私は現在、完全に舞い上がっている状態だった。



(やった! やってしまった! ああ! どうしよう私!)



 つい先程、私は人生で初めての”告白”をしてしまった。

 相手は後輩……、二つ下の男の子である。



(ま、まさか、この私が自分から男の子に告白をすることになるとは……)



 自分で言うのもアレだが、私は結構モテる。

 デキル女かつ美少女というのは自称に過ぎないが、他人から見てもその評価はほとんど変わりないと言えるだろう。

 男子の間で、私がクールビューティと言われていることも、当然だが認識していた。


 その私が、ほぼ勢いに任せるまま、後輩の男子に告白してしまったのである。

 私は今になってその事実を噛みしめ、完全に頭がゆだっていた。



「ふ、藤原さん? 大丈夫? やっぱり、保健室で寝ていた方が良いんじゃ……?」



 そんな私を見て、隣の席の中村さんが心配そうに声をかけてくる。

 つい先程まで私は保健室に行っていたことになっているため、本気で体調を心配してくれているのだろう。



「心配してくれてありがとう、中村さん。でも大丈夫。ちょっと熱があるだけだから、薬が効いてくれば落ち着くと思う」


「そ、そう? でも、あんまり無理しちゃ駄目だよ?」


「ええ。もし薬が効かなかったら、そのときはまた保健室に行くことにするわ」



 そう笑顔で返し、私は一度大きく深呼吸をする。



(COOLよ……、いえ、KOOLになれ、私……)



 このままの状態が続けば、中村さん以外にも私の状態を(いぶか)しむ生徒が出てくるだろう。

 あまり大きな騒ぎになられても困るため、私はなんとか冷静になるよう努める。



(心頭滅却すれば火もまた涼し……、心頭滅却すれば火もまた涼し……!)



 自己暗示のようにことわざや念仏、あるいは素数を数えたりしながら精神を落ち着かせていく。

 授業の内容などほぼ無視することになったが、今はそんなことを気にしている余裕がなかった。


 ……その努力の甲斐があってか、三時限の授業が終わる頃になって、私はなんとか落ち着きを取り戻すことに成功する。



(フッ……、自分を俯瞰視(ふかんし)すれば、どうってことなかったわね……)



 などと、やや中二病気味なことを考える程度には余裕も出てきている。

 今の世の中、女の方から告白する事例なんていくらでもあると自分に言い聞かせた甲斐があった。



(まあ、いずれにしても過ぎたことに対し今更悶々(もんもん)としても仕方ないわ。考えるべきは、むしろこれからのこと……)



 勢いで告白をしたはいいものの、杉山君の返事はまだ貰っていない。

 完全停止した彼が動きだすまで待っていられるほどの余裕はなかったため、私から話題を変えて教室に戻るよう促したのだ。

 しかし、一度自分で流れを断ち切っておいてアレだが、今後私はどう動けば良いだろうか?


 今朝の件については、一年生の教室付近で起きたこともあってか、まだ三年生には情報が広まっていないようであった。

 しかし、部活関係などで後輩との繋がりがある生徒経由で、明日には噂が広まっていてもおかしくはない。

 それまでに、ある程度方針をまとめておく必要がある。


 まず、今朝の件についてだ。

 アレは完全に私のミスであった。

 少々舞い上がっていたとはいえ、いくらなんでも迂闊過ぎた。

 もしあのとき、杉山君が気を利かせて庇ってくれなければ、私がヲタクだという噂は瞬く間に広がったに違いない。

 結果として杉山君が犠牲になってしまったのは大変心苦しいが、それについてはもうある程度覚悟(・・)は決めていた。


 ただ、これにはもちろん、杉山君とも示し合わせが必要になる。

 彼が我が身を犠牲にしてまで守った私の秘密を、私があっさり明かすというのはどうなのかと思うからだ。

 漫画などでは良くそんなシーンを見かけるが、相手の行為を無駄にするような行動を取るのは私としては”なし”である。

 もし秘密を明かすのであれば、しっかり本人から同意を得てからにすべきだと思う。

 ……ひとまず、差し障りのない言い訳は今日中に考えておくことにしよう。


 そのためには杉山君と一度打ち合わせを行いべきなのだが、果たして私は素面で彼の顔を見れるのだろうか?

 先程までの状態から考えると、中々に難しいかもしれない。



(熱くならないように冷えピ〇でも全身に貼ろうかしら……)



 我ながらバカな考えかと思うが、あの全身の熱さから解放されるには良い案かもしれない。

 ……まあ、残念ながら冷え〇タなど持ち歩いてはいないが。



(……! いや、冷え〇タは無いけど、保冷剤ならある!)



 今日はお弁当を作ってきたため、それ用の保冷剤ならある。

 気休め程度だが、それを首筋にでも貼っておくことにしよう。


 次に、杉山君と話し合う内容だが、まず告白の件は保留にしてもらうことにする。

 正直、今の私ではOKされても断られてもまともでいられる自信がない。

 まずは、身に回りの状況の安定化を図ることに力を注いだ方が良いだろう。

 恐らく彼も、そう簡単には返事などできないだろうから、この案は飲んでくれるハズ。

 あとは、今朝の件をどうするか打ち合わせするとして……、ってそうだ、話しかけるきっかけはどうしよう……


 あんなこと(告白)をしてしまった手前、私が話しかければまず間違いなく意識をされるだろう。

 最悪、杉山君のことだから逃げ出してしまう可能性だってある。

 私は保冷剤の恩恵で素面(しらふ)を保てる(ハズだ)からいいけど、それでもなるべく自然に彼を連れ出す動機が欲しい。



(いや……、その前に、保冷剤はまだ冷たいのだろうか?)



 お弁当はしっかり冷ましたとはいえ、保冷剤は徐々に溶けていくものだ。

 もしかしたら、もう既に使い物にならなくなっている可能性はある。

 私は授業そっちのけで、保冷剤がまだ冷たいかを確かめるべく鞄をまさぐる。



(……良かった、もう溶けかけだけど、まだ十分冷たい。…………ん?)



 保冷剤の状態を確認する際、当然だが一緒にお弁当にも手が触れることになる。

 その瞬間、私は彼を誘い出す口実を閃いたのであった。




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[一言] きゃわわわわ( ˘ω˘ )
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