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青春時代の歳の差なんて~中高生の歳の差恋愛物語~  作者: 九傷


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第27話 三人で登校(塚原 元)



(……いかんな)



 登校中、俺は珍しく居たたまれない気分になっていた。

 原因は、俺の隣を一緒に歩いている二人の少女達のせいである。


 二人のうち一人は、前島 郁乃(まえじまいくの)さんだ。

 彼女は俺と同じ学年の生徒で、恩人でもある坂本 修(さかもとあつむ)先輩の恋人である。

 色々事情があり、彼女と一緒に登校することになってしまったのだが、やはりこれは少し問題な気がする。



(だって、自分の彼女なんだぞ? それをわざわざ別の男と一緒に登校させるなんて、流石におかしくないか?)



 (しゅう)先輩の言い分では「悪い虫が近寄らないように」にとのことだったが、だったら自分が一緒に登校すれば良いだけじゃないかと思ってしまう。

 二人の関係を隠しておきたいという気持ちがまだあるのかもしれないが、既に周知の事実である以上今更隠す意味もないと情報を解禁したのは他でもない修先輩自身だ。

 前島さんに友達を作る一環だということは承知しているが、このやり方については正直疑問でいっぱいである。



「な、何よ、コッチのことジロジロ見て……。言っておくけど、私に気があっても無駄だからね? 私は修君以外ありえないから」


「っ! そんなつもりは断じてない! というか、わざわざ一緒に登校してやってるのに、その言い草はないだろ!?」


「フーン、私は頼んでないもーん」


(コイツ……! 先日ギャーギャーと騒いだから仕方なく付き合ってやってるのに……!)



 俺と前島さんは、修先輩からなるべく(・・・・)一緒に登下校をするように言いつけられている。

 なるべく、とのことだったので初日はあえて無視したのだが、そのせいで先日は酷い目にあった。

 だから今日は、嫌々ながらも一緒に登校したというのに、当の本人はこの態度である。


 はっきり言って、前島さんと一緒に登校することは俺にとってデメリットでしかない。

 他人の恋人と一緒に登校するなんて余計な憶測が飛び交うだけだし、最悪面倒な誤解を受けかねないからだ。

 さらに、彼女は喋りさえしなければ間違いなく美人の部類に入るので、妬みのような感情を向けられることも多い。

 というか、先程からそんな視線ばかりを感じる気がする。



(……まあ、その原因は前島さんだけではないが)



 妬みの視線を受けるもう一つの原因は、俺と前島さんの間に陣取っている少女、朝霧 柚葉(あさぎりゆずは)さんにある。



「先輩、本当に前島先輩のことを、何とも思っていないんですよね?」


「……だから、何度もそう言ってるだろ? 前島さんとは、友達になるのを前提に少し付き合っているだけだよ」


「……!? 付き合ってるのですか!?」


「いや、ごめん、言い方が悪かった。友達になれるように努力中ってだけで、ほとんど他人と変わりないよ。……いや、現状では他人以下かもしれないな」



 俺は少し大きめの声で、前島さんとの関係についてしっかり否定しておく。

 俺が誤解を受けたくないのは何も朝霧さんに限った話でなく、今聞き耳を立てている生徒達全てだからだ。

 今のを聞いて、少しくらいはこの敵意が軽減されればいいのだが……



「ちょっと! 他人以下ってどういうことよ!?」


「いや、だって俺、現状前島さんの印象あまり良くないし……」



 こういうところも含め、前島さんは本当に面倒な存在だ。

 決して悪い人間じゃないし、色々と同情する部分もあるのだが、この性格を変えないと正直どうにもならない気がする。

 介護にしてもボランティアにしても、何かしらポジティブな理由がなければ長続きはしないものだ。

 だからこの関係も、今のままでは続けられる自信があまりないのである。

 


「私の印象が悪いてすって!?」



 いや、これで悪くないと思う方がおかしいって……

 彼女の一番厄介なところは、この衝動的に思ったことが口に出てしまう癖だろう。

 これについては、本人も悪癖だと自覚はしているようだが、直そうと思っても中々直せないようだ。

 ……そして、それを唯一制御できる存在が、修先輩なのである。

 本人もそれを理解しているからこそ前島さんは修先輩に依存するし、逆に修先輩はそれを良く思っていないからこそ、こんなやり方をするのだと思う。



(本当に、面倒なことを引き受けてしまったな……)



 面倒事に首を突っ込むのはいつものことだが、今回は随分と状況が違う。

 いつものように、なるようになるさ精神ではダメな気がしてならない。



「あの、あまり大きな声を出さない方が良いと思います」


「何よ! アンタまで私が悪いって言いたいの!?」


「いえ、悪いとは言うより、損をしているなと思います。相手の言葉に対して反射的に言い返すのではなく、少しテンポを遅らせてみてはどうでしょうか?」



 朝霧さんにそう言われ、前島さんは少しバツの悪そうな顔をする。

 やはり、本人も自覚はあるのだろう。

 ただ、わかっていてもそれを直せないから、あんな顔をするのだ。

 そういうところは俺にも良く理解できる。



「……前島さん、俺も君のことは決して悪い人間だなんて思っていないよ。ただ、俺だって今の状況は正直複雑だと思っているんだ……。すぐに切り替えられるほど器用な人間でもないし、ちょっと時間をくれないか? 俺達、まだ一年生なんだしさ」



 俺がそう言うと、前島さんは顔をヒクヒクとさせて複雑そうな表情になった。

 もしかしたら、朝霧さんの言うことを実践しようとしているのかもしれない。



「……わ、わかったわよ。なるべくだけど、すぐに反応しないように、してみる」



 表情には出さなかったが、その言葉に俺は心底ホッとした。




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