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冴えない才女とサウナと酒場  作者: 城築ゆう
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2-2

 ひょんなことから私は、幼馴染のコッコと会う運びになった。近所に新しくできたスーパー銭湯に行こう、ということになったのだ。

 学生の頃は大学の近くのスーパー銭湯によく通った。

 目当ては岩盤浴コーナーにある漫画で、宮部とダラダラ一日過ごすのが幸せだった。そんなことを思い出すと、心臓の裏がキリキリと痛んだ。

「真琴、久しぶりー。元気ないねえ〜」

「うん。まあ……彼氏……と、ちょっと……」

 スーパー銭湯に向かう道中、コッコに「小川真冬」宛ラブレター入りのティファニーの紙袋の話をした。

 「へえー。宮部、あいつめっちゃクソだね。そんなん別れる一択」

 うん、そうだと思うんだけど、と口ごもってそれ以上何も言えなかった。何も言えなかったが、不誠実な彼のことを一刀両断してくれる親友の言葉に、ここ最近の不運続きで滅入ってしまっていた気持ちが救われるようだった。

 中学二年生の時からぐんぐんと背が伸び、今や百七十センチ近くある私とは対照的に、親友は中学生くらいから、ほとんど背も顔も変わらないようだ。


「わたし、サウナで『ととのう』ってやつやってみたい。さっさとご飯食べて早くお風呂行こうよ!」

 コッコは昔と変わらない無邪気な様子で、つられて私も元気になれそうだ。

 もう二ヶ月近く、カロリーメイトやゼリーでやり過ごしていたほど体が食べ物を受け付けなかったのに、今日は食べられそうな気がする。


 私たちはスーパー銭湯の近くの焼き鳥屋に入ることにした。

 私はお肉の中では鶏肉が一番好きだけど、宮部は鶏肉が苦手だというので、料理を振る舞うときは避けていた。自分ひとりでご飯を作って食べるときも、宮部のために作る料理の練習をしたかったので鶏肉はほとんど使わなかった。

 

 家でお菓子を食べて来たためそんなにお腹が空いていないというコッコと二人して、注文した分は残さないようにと胃に詰め込んだ。

 苦しかったけれども、好物の鶏肉が少しでも食べられて満足だった。何より、孤独でない食事が嬉しかった。

 私たちは当初の予定通りさっさと食事を済ませ、銭湯へ向かった。

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