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冴えない才女とサウナと酒場  作者: 城築ゆう
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1-4

 真琴が最後にまともな食事をとったのは、「例の日」の夕食だった。約一か月も前の渾身のポテトサラダがどんな味をしていたかなどということは、思い出すのも難しい。

 栄養不足で体はつらいのに、夜はほとんど眠れない。細切れな浅い睡眠中に見る夢は軒並み悪夢だったが、起きても悪夢から覚めた気分にはならなかった。

 宮部からは毎日連絡が来ている。本来なら救済となるはずの恋人の存在こそ、今の真琴には一番堪えがたかった。

 宮部は誠実さの証明としてか、「小川千冬」とのやりとりのLINEの一部のキャプチャを撮って寄越した。「小川千冬」とのやりとりの最後には、「しばらく連絡を取るのをやめます。お元気で」とあった。しかしその一文字一文字に、絶対的存在への恋慕が感じ取れた。

 彼曰く、小川千冬は近所の高校の二歳上の女性で、宮部の通っていた男子校の文化祭に来ていたところに一目ぼれして以来、ずっと片思いしてきたらしい。

 小川千冬は、短大卒業後すぐに結婚したが、二年と三か月で離婚。

 その離婚を、小川千冬本人から遅れて聞かされて以来、宮部は彼女に猛アタックしていたが、宮部本人が言うには「見向きもされなかった」らしい。

 見向きもされないのが実際にはどれほどの状態だったかは真琴は知らないが、少なくとも小川千冬のLINEからは彼女の満更でもない様子が感じ取れたし、所々の電話と、その数時間後に、『さっきはありがとう』などというやりとりがあったところから、自分に伝えられていた「出張」や「残業」は、多かれ少なかれ水増しされていたことが直感的にわかった。


 宮部は絶対的な存在を否定しなかったが、真琴との別れを予感した瞬間、真琴もまた自分にとってかけがえのない存在であることを感じたと述べた。

 真琴は真琴で、彼女のスマホのブラウザアプリには『彼氏 距離を置いたあと 復縁』『彼氏 他に好きな人』『彼氏 別れそう よりを戻したい』といった検索履歴が蓄積していた。

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