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冴えない才女とサウナと酒場  作者: 城築ゆう
34/51

5-3

 永瀬は週に一、二日、トルマリンに来た。来店時は開店から閉店までほとんどずっとおり、店が空いているときは、一番奥のボックス席に座りたがる。

 真琴以外の女の子が接客することもあるが、逆に真琴がつくときには真琴以外の女の子たちを遠ざけて二人きりになろうとする。


「まこちー、今日の永瀬まーじやばかったよー。まこちーが氷の補充行くとき、ストップウォッチで戻るまでの時間はかってんだよ? ゆあ、この店でそんなことする人、はじめて見たあ」

 ゆあは、真琴よりも十センチ以上背が低く、トルマリンのホステスたちの中で一番若いが、夜の仕事には慣れているらしく真琴に色々なことを教えてくれる。

 勉強は苦手で、偏差値のあまり高くない大学に通っているということだったが、愛くるしい見た目と誰とでもすぐに仲良くなることができるコミュニケーション能力の高さから、きっと就活は自分よりもずっとうまくやるのだろうと真琴は考えていた。

「ストップウォッチ? それなんの意味があるの?」

「よくいるんだよね、時間測って『戻ってくるまでに何分かかった、君と一緒にいるための時間が短くなった』みたいな文句言うの。キャバとかにはそーゆー奴よくいるんだよね、キャバは時間制だからさあ」

 ゆあは茶色い巻き髪の先っぽを指でいじりながら「うざいよねえ」とため息をついた。

「ゆあちゃんはキャバクラで働いてたとき、そういうお客さんはどうしてたの?」

「まー、ストーカーにならないようにだけ頑張って調整するって感じかなあ」

 そう言ってからゆあは腕を組んで目を瞑って「んー」と唸り、しばらくしてから開眼した。

「まあ聖子ママに釘刺されてあの様子だったら、ストーカーとかは大丈夫じゃないかな?オーラスで居座るのはダルいけど、ケチケチしないでドリンクくれるし、引っ張れるだけ引っ張っとこ!」

 永瀬は一度来店するとオープン時刻から営業終了のラスト時刻まで居座り続ける。時間制ではないトルマリンではそう珍しいタイプの客ではないが、真琴だけを目当てに来ているため、真琴には負担ではある。しかし、ドリンクだってねだればいくらでも飲ませてくれるので、ドリンク代のバックは真琴の給与に上乗せされる点は都合が良いだろう、ということだった。

 真琴はカウンターに肘を付いて手のひらに顎を載せ、眉間にシワを寄せながら悩ましげに「確かにねえ」と答えた。

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