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冴えない才女とサウナと酒場  作者: 城築ゆう
21/51

3-3

 あれ以来私はずっと調子が悪い。

 確かにあれから二、三日微熱は続いた。しかし熱が引いても、後頭部に金属のような重たいものが入っているみたいな違和感がある。

 体調が悪いからか、仕事もうまくいかない。話そうとしても言葉が舌の奥で引っかかって出てこない。

 前は興味のない話でもいくらでも聞けたのに、今は全然頭に入ってこない。

 小林さんのセクハラも、いつもみたいに愉快な返しができない。ただただ困って笑うことしかできなくて、そんな私を見て小林さんはバツが悪そうに手を引っ込める。

 そんなことが何度か繰り返し、とうとう小林さんは私にはセクハラもしなくなったし、隣に違う女の子が座っていたらそっちとばかり喋るようになってしまった。

 お酒を飲むことでしかお店に貢献できなくなってしまったので、いつもよりたくさんお客さんからお酒をいただくようにして、ひたすら飲んだ。


 だからその日は、とにかく酔っていた。

 自転車を押して帰っていると、後ろの方で足音が聞こえた。二、三度、吐き気でその場にうずくまったのだが、その度足音も止まった。

 うずくまり、えずく振りをして後ろの様子を伺うと、物陰に隠れてこちらの様子を伺うよく知った顔があった。永瀬さんだ。見間違いではない。声をかけようとうずくまった状態から体を起こして振り向くと、早足で反対方向へ行く足音が響いた。

 さすがに間違いだと思いたかった。

 トルマリンのお客さんたちは確かにこの近所に住んでいる人たちが大半で、女の子たちの住んでいる場所も似たようなもので、だけれどもお互い暗黙のルール的に、はたまた常識的な感覚で、そんなことをする人はいない、と思っていた。

 永瀬さんは確かに私のことを気に入ってくれているらしかったけれども、悪意があるような人や、常識がないような人には見えなかった。

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