2話 お姫様だって
俺は蹴られた痛みに耐えつつ、少女を見て、そういえば姫様とか言っていたなと思う。
彼女は俺と清音に名乗る
「我は八宮尊皇の娘、菊と申す。」
俺は平然と答える
「俺は熊野つな、こちらは柏森の清音だ。」
清音を見ると平伏している。
3人の護衛がおかしな者でも見るように俺を見ながら固まっている。
清音が平伏しながら俺に言う
「帝の娘よ。」
「帝?」
「倭の国で一番偉い人よ。」
俺はやらかしてしまったらしい。
急いで平伏する。
3人の護衛も膝をつく。
菊は俺と清音に
「つなは面白いな、我は顔を見せたぞ、清音の番よ。」
「無礼になりますのでご寛恕ください。」
清音が容赦を願う
「我が許す、顔を見せておくれ。」
「はい。」
清音は仮面を外すが平伏したままだ
「面を上げるがよい。」
清音は恐る恐る顔を上げる
「美しいのう。」
菊は感想を言うと俺に聞く
「つなよ、我と清音、どちらが美しいと思う。」
「清音です。」
「正直ものだのう。」
菊は笑う。
3人の護衛がものすごい顔で俺を睨んでいる。
菊は清音の申し入れを受け入れ、俺と清音は扶桑まで菊を護衛することになる。
彼女は清音を気に入り、清音を牛車に乗せる、仮面は外している。
俺は護衛に睨まれながら歩く、俺は護衛に完全に睨まれたようだ。
菊は清音に聞く
「化け物は夜、動くと聞いていたがあの鬼たちは別か。」
「赤鬼も普通、夜活動します、あの鬼たちは変です。」
「どのように変なのだ。」
「赤鬼は群れません、それに私たちを無視して牛車を狙いました。」
「やはり、我は狙われているようだの」
「赤鬼を操っているのですか。」
「そういうことが出来る者たちがいるそうだ。」
菊は自分が狙われているのに平然と言う。
夕方になり寝る場所を決め、俺が陣を張る。
護衛の1人が俺に聞く
「何だこれは。」
「陣です、声を出さない限り化け物から守ってくれます。」
俺は簡単に答える。
護衛は火を焚けないことに文句を言うが、清音の言うことを聞く約束なので強くは言えない。
深夜、赤鬼が5匹陣の前に来て、嗅ぎまわる。
俺たちは奇襲をかける。
清音は陣を出ると赤鬼の右足を切り倒れたところを首をはねる。
俺は刀に力を乗せて刀身を伸ばして横なぎに振り、2匹の胴を切る。
残る2匹が反撃してくる。
1匹は清音に向かってこぶしをぶつける。
彼女は避けるとその腕を足場にして駆け上がり首をはねる。
俺に向かってきた赤鬼は岩を拾い投げつける。
俺は避けながら近づき左足を切る。
赤鬼は倒れてきたところを心臓めがけて刀を突き入れる。
俺たちは数分で5匹の赤鬼を倒す。
護衛は唖然としてみている。
菊は牛車から出てきてうなづいている。