12話 つなの苦悩
1日目の夜は、美代が陣を張る。俺は馬車の外で寝る。清音、弥次郎、千代音も馬車の外に出ている。襲撃に備える癖がついている。
清音が俺の所に来て言う。
「つなのあれ治らないの。」
「馬車の中のこと。」
「そうよ。」
「菊姫が迫って来るんだ。」
「姫様のせいにしない。」
「誘惑には勝てないよ。」
「ここで試してみる。」
清音は仮面を外して上目遣いで俺を見る。あざとい。清音は目をつむる。桜色の唇に目が行く。俺は清音にキスをする。そして、抱きしめる。
俺の腕の中で清音は柔らかく、壊れそうに華奢だ。俺は清音を押し倒す。清音が言う。
「みんなに見られるわ。」
「止まらないよ。」
背徳感が俺を高ぶらせる。その時、一つ目が4匹陣の近くに来る。みんな静かにするが俺と清音はごそごそしている。
一つ目はしばらくすると去って行く。俺と清音は千代音の怒りを買う。俺たちは正座して、千代音に怒られる。
「2人ともたるんでいます。化け物が来ているのに何やっているんですか。あなたたちの行為はみんなを危険にさらします。」
千代音の説教は長かった。
2日目は朝から菊が俺に迫ってきている。今日やらかしたら千代音に切られかねない。俺は狭い車の中で逃げ道を失いつつある。
「どうしたの、つな様。昨日は、あんなに激しかったのに。」
「今日はやめておこう、なっ、なっ。」
「逃がさないわ。」
菊は俺に抱き着いてくる。菊の良い香りがして、手に柔らかいものが当たる。俺は早くも白旗を上げる。
馬車の中からは悩ましげな声が聞こえてくる。馬車の横についている美代が赤くなる。
達郎はうらやましく思いつつもあきれる。
こうして2日目は夕方を迎える。俺は宗七に呼ばれる。
「つな様、馬車のこと聞き及んでいますよ。」
「すみません。俺にはこらえることが出来ないようです。」
「諦めないでください。」
「しかし・・・」
「明日は国府に付きます。1日の我慢ですから自重してください。」
「頑張ります。」
宗七はため息をつく。美代は俺と顔を合わせようとしない。
2日目の夜、俺たちは地面の振動で目を覚ます。達郎が言う。
「赤鬼が2匹近づいてきます。」
フクロウの達郎の目は健在である。赤鬼は陣の近くまで来る。その時、馬が鳴いてしまう。
護衛が10人陣から飛び出る。赤鬼は何もできずに退治される。
護衛が強いため俺たちはやることがない。俺たちが出て行ってしまっては護衛の仕事を奪ってしまう。
3日目の朝が来る。今日、国府に到着予定である。俺は菊に頼む
「今日だけは勘弁してください。」
「つな様は私が嫌いなのですか。」
「好きです。」
「なら、証拠を見せてください。」
「今日の夜、夜にしてください。」
「分かりました。」
俺の懇願は受け入れられ、国府で醜態をさらすことは避けられる。




