6話 開戦前
俺は館や館の周りに張った陣の点検をする。いざという時に札が破れたりしていてはいけないためである。
宗七と影平は、町の周りの堀と木の柵を2日で完成させる。土木職人たちの協力があってこその早業である。
日野翔馬の軍3000は四宮にまっすぐ進んでいる。翔馬は佐山の軍の目標は四宮と確信している。
九条頼之の軍3000は、佐山の軍の目撃情報から進軍先を予想して進んでいる。
佐山の軍は、町を避けて、見つからないように進んでいるため、予定より進軍が遅れている。
眼鬼は、副将に言う
「進軍が遅れては、わが軍の威信にかかわるぞ。」
「しかし、町を避けながらでは、早く進むことは無理です。」
「そこを何とかするのがお前の役割であろう。」
「では、夜間に行軍しましょう。」
「そうだな、良い方法だ。」
「はい、今夜から実行に移します。」
副将は兵たちが不安になると考えるが進軍を早くするにはこの方法しかないと言い聞かせる。
宗七は馬を使った索敵を行っている。索敵の兵が佐山の軍を発見する。発見の報告は宗七に届く。
宗七は菊姫に報告に行く
「佐山の軍を発見しました。」
「どこにいますか。」
「あと1日で到着すると予想されます。」
「佐山の軍全てですか。」
「およそ兵2000に鬼がいるようです。」
「分かりました。日野殿の軍か向かっております。それまで防いでください。」
「援軍の必要はないかもしれません。」
「倍以上の軍ですよ。」
「分かっております。」
「采配は任せます。」
「ありがとうございます。」
菊は俺たち6人を呼ぶ。
「佐山の軍があと1日の所まで近づいています。館の警戒をお願いします。」
「分かりました。鬼柳が来れば討ち取ります。」
俺たちは鬼柳に備えることにする。菊は翔馬の軍に書簡を送る。翔馬の軍は扶桑を出たところである。このままでは5日かかる。
眼鬼は、四宮の軍に居場所を知られてしまったことにこれまでの努力が無に帰したと思う。
相手が馬だったため取り逃がしてしまったのだ。だが、四宮まで1日かからない、四宮は防衛の準備を間に合わないと考える。
そして、夜を徹して行軍し次の朝には四宮に到達して、四宮の北側の丘に布陣する。
宗七は、夕方に佐山の軍は到達すると考えていた。しかし朝には布陣をしている。
宗七は急いで第1部隊と第2部隊を先行して出撃させる。そして第3部隊が出撃する。
眼鬼は、四宮が堀と柵を完成させていることに驚くが、四宮の軍が布陣で来ていないことに先手をとれると考える。
彼は副将に言う
「能鬼師に鬼をけしかけさせろ。すべて出せ。」
鬼たちが佐山の陣を出て丘を駆け下りていく。




