4話 佐山の軍の出陣
鬼柳は、軍の指揮官の眼鬼を呼ぶ。鬼柳が眼鬼に兵の強化を指示して3か月が経つ。
「兵たちは強くなったか。」
「はい、鬼に対抗できるほどになりました。」
眼鬼はうそを言う。彼は人間の力を低く見ているため訓練を怠っていたのだ。
訓練は配下の者に任せて、自分は兵の熟練度を知らない。
「ならば四宮の兵1000に後れを取ることはないな。」
「はっ。」
眼鬼は自分の立場が危うくなったことを知る。
四宮の軍は、大治の戦で倭の勝利を決定した精鋭である。
半数しかいないとはいえ、佐山の軍2000では勝利は危うい。
眼鬼は、鬼を使うことを考える。
「鬼柳様にお願いがございます。能鬼師をお貸しください。策略がございます。」
「好きなだけ連れていくがよい。」
「ありがとうございます。」
眼鬼は持ち場へ去って行く。
華妖仙が鬼柳に言う
「眼鬼に任せてだいじょうぶですか。」
「勝ち負けは関係ないのだ。つなたち6人を領主の館から戦場に引っ張り出せればよいのだ。」
「何を企んでいるのですか。」
「菊姫と側室たちを血祭りにあげてやる。館を使用人たちの血で染め上げてやろう。」
「彼女たちには、私も恨みがあります。ご一緒してよろしいですか。」
「つなたちは、勘が鋭い。お前では見つかるかもしれん。」
「分かりました。吉報を待つことにします。」
華妖仙は引き下がる。
眼鬼は出陣の用意に取り掛かる。
四宮までは戦をせずに行軍しても3週間以上かかる。このため食料の確保は重要である。
眼鬼は村々から食料を徴収する。村人たちは、これ以上食料を取り上げられたら冬を越すことが出来ないと訴えるが聞き入れられない。
さらに、彼はすべての鬼を連れていくことにする。鬼を四宮の軍に突入させて軍が乱れたところを討つつもりなのだ。
準備が整うと佐山の軍は出陣する。行動を察知されないように大治を大きく迂回して進む。
村に行きあたると、皆殺しにして食料を奪っていく。
眼鬼は、行軍を見た者は皆殺しにするように指示する。
行軍は、不幸な村や旅人を飲み込みながら進んでいく。




