11話 戦勝の宴
四宮の軍は、佐山の軍に圧勝する。
それでも大軍を相手にしたのである。
軍には少なからず戦死者が出る。
四宮の軍が大治の門を通ると歓声で迎えられる。
町の人々は、俺たちが町を救ったと口々に言う。
軍は英雄にまつり上げられる。
宗七が俺に言う
「うれしくないのですか、勝ったのですよ。」
「勝ったけど犠牲者は出ているよ。」
「つな様らしいですね。」
「気にはならないの。」
「気にはなりますが、覚悟はできています。」
宗七は俺より物事を先まで考えているらしい。
清音が言う
「戦になれば、敵も味方も死人が出る。」
「そうだけど。」
「味方に死人が出ないと考えるのは不遜よ。」
「そうだね。清音の言うとおりだ。」
俺は、味方の強さにおごっていたのかもしれない。
勝成が俺たちを出迎える
「宗七殿の計略は見事でした。」
「兵たちが良くやってくれました。」
「そんなことはありませんぞ、わがほうの被害は少ないのに、敵をほぼ殲滅できました。」
「これからどうなさるのですか。」
「先ほど勝利の報告を帝に送りました。」
「帝に判断を任せるのですね。」
「はい、奴国を攻めるのは倭の一大事です。私には判断できません。」
「我々は、しばらく大治にいたほうがよさそうですね。」
「お願いします。」
その晩、勝成の館では、戦勝の宴が開かれる。
兵たちにも酒が振る舞われる。
宗七は翔馬、頼之と話をしている。
俺は弥次郎と話している
「つなさん、また強くなりましたね。」
「そうですか、一歩間違えれば孟鬼に負けていましたよ。」
「私は、孟鬼には勝てません。」
「何を言っているのですか。」
「孟鬼の方が腕が立ちます。」
「でも、俺が勝ちましたよ。」
「そうです。どうやってそんなに強くなるんですか。」
「俺は、部隊の訓練の時、兵の相手をしています。」
「精鋭の兵の相手をしているのですね。」
「そういうことです。」
「今度、部隊を貸してください。」
「分かりました。」
そこに勝成がやってくる
「つな殿、敵の大将を討ち取ってくれてありがとうございます。」
「はい、何とか討ち取りました。」
「つな殿の剣の腕はすごいです。」
「まだまだです。」
「それでは相手がいなくなりますぞ。」
「私は鬼柳を討ち取りたいのです。」
「鬼柳はそれほど強いのですか。」
「得体の知れない相手です。」
「そうですか、佐山攻めが決まると良いですね。」
「佐山攻めは危険です。」
「なぜですか。」
「情報がありません。」
「そうですか、私は好機だと思いますよ。」
「帝が決めることです。」
俺は、このまま攻めれば手痛い目に遭うのではないかと思う。




