9話 一方的な戦い
四宮の軍は、闇夜の中を移動する。
軍は統制がとれていて乱れがない。
佐山の軍に気づかれず、北側の配置に着く。
中央に第3部隊、右翼に第1部隊、左翼に第2部隊がいる。
そして、夜明けを待つ。
夜が白み始めたころ、佐山の陣が騒がしくなる。
弥次郎、千代音、達郎、美代が、馬で、佐山の陣に乱入したのだ。
これを合図に、第1部隊と第2部隊に突撃の指示が来る。
第3部隊も前に進む。
薄明りの中、佐山の陣は混乱している。
第1部隊が西側から攻め込み、第2部隊が東側から攻め込む。
孟鬼は、軍に指示を出そうとするが、側近のみが孟鬼に従うのみである。
佐山の軍は数こそ5000人を超えているが素人の集団である。
第1部隊と第2部隊は東西から蹂躙を始める。
弥次郎、千代音、達郎、美代は、混乱に乗じて孟鬼の首を狙う。
兵の多くは北へ向かうがそこには第3部隊が待ち構えている。
第3部隊は鶴翼の陣形で佐山の兵を討ち取って行く。
明るくなるころには、佐山の陣取っていた丘は、血で赤く染まっている。
第1部隊と第2部隊は、敵兵も鬼も関係なく討ち取って行く。
連携の取れていない軍は、精鋭部隊にとって、狩る獲物でしかない。
弥次郎、千代音、達郎、美代は、孟鬼の側近と切り結んでいる。
4人は、側近を1人また1人と討ち取って行く。
孟鬼にとっては、悪夢のような光景である。
副将が孟鬼に進言する
「ここは私に任せて、落ち延びてください。」
「指揮官に逃げろと言うのか。」
「まだ、南に行けば道が開けます。」
「おまえが、兵たちを連れて逃げろ。」
「孟鬼様。」
「俺は戦う。生き延びても鬼柳様に合わせる顔がないからな。行け。」
副将は兵に呼びかける
「聞けー、南に進めー、進めー」
兵たちが南に逃げ始める。
宗七は殲滅できると読んでいたが、渋い顔になり
「やられましたね。」
と独り言を言う。
孟鬼と側近たちは第1部隊と第2部隊にも囲まれる。
そして側近は倒され、孟鬼1人になる。
俺は、孟鬼に言う
「勝負は着いた。降参しろ。」
孟鬼は俺を睨むと向かってくる。
孟鬼の剣は鋭く早いが、俺は剣げきの剣線をそらしながらかわし隙をうかがう。
俺が受けに徹していると孟鬼は間合いを取り、俺に言う
「私は孟鬼、名前を聞こう。」
「熊野つなだ。」
俺が答えると孟鬼は戦いを再開する。
俺は一気に間合いを詰めると突きを繰り出す。
孟鬼はかわすが、振りかぶった右腕を俺の刀が貫く。
孟鬼は構わず刀を振り下ろす。
俺は刀を離し、姿勢を低くして、刀をかわすと孟鬼の足を払う。
孟鬼は仰向けに倒れる。
清音が俺に刀を渡す。
俺は孟鬼の左腕を切り払うと刀で心臓を刺し貫く。
孟鬼の首をはねると俺は首を掲げる。
第1部隊と第2部隊から歓声が上がる。
南に逃げた副将の部隊は300人程になっている。
翔馬の軍300が横陣形で立ちはだかる。
副将は魚鱗の陣形で突入する。
副将の軍は何とか突破するが、その前には頼之の軍が魚鱗の陣形で正面からぶつかってくる。
副将は兵たちを鼓舞する
「進めー、前へ進めー」
頼之の軍を抜けた時には15人程に減っている。
副将は西へ転身し、国境の草原に入る。
この時、兵は10人になっている。




