5話 長い1日
4日目の朝が来る。
大治の軍と翔馬の軍は、すでに配置についている。
明るくなると佐山の陣から太鼓を打ち鳴らす音が聞こえる。
そして、雑鬼の軍と火鬼の軍が出てくる。
2つの軍は町を取り巻くように移動を始める。
雑鬼の軍は反時計回りに、火鬼の軍は時計回りに進み始める。
町の南側にいる翔馬は、大治の兵からの情報に魚鱗の陣形を取る。
そして時計回りに移動を始める。
翔馬が時計回りにしたのは、雑鬼の軍と当たるようにしたためである。
こうすれば、無傷の火鬼の軍からは常に逃げる形になるからである。
雑鬼の軍は、翔馬の軍を見つけると魚鱗の陣形になる。
翔馬の軍と雑鬼の軍は、正面からぶつかる。
雑鬼の軍は、翔馬の軍を切り裂いていく。
翔馬の軍は、2つに引き裂かれるが元に戻る。
副隊長が翔馬に言う
「これでは、兵が逃げることだけうまくなってしまいます。」
「今は、これしかないよ。奴らは気づいたかな。」
「次に当たれば分かります。」
副隊長は答える。
再び、翔馬の軍と雑鬼の軍は、正面からぶつかる。
今回も雑鬼の軍は、翔馬の軍を切り裂いていく。
雑鬼は違和感を感じる。
自分たちは今、挟み撃ちにして優位なはずである。
だから自分の軍が討ち勝つのは当然に思えるが手ごたえが軽いのである。
雑鬼は、次に当たるとき確かめることにする。
翔馬の軍は、魚鱗の陣形のまま時計回りに進んでいる。
雑鬼の軍は、魚鱗の陣形のまま反時計回りに進んでいたが、翔馬の軍を見つけると横陣形に作り変える。
翔馬の軍と雑鬼の軍は、正面からぶつかる。
翔馬の軍は、紡錘の陣形になり中央突破する。
翔馬は、副隊長に言う
「これはばれましたね。」
「本当に逃げますか。」
「今日だけでも時間を稼ぎましょう。」
翔馬は腹を決める。
雑鬼は、火鬼に伝令を送る。
火鬼は、雑鬼から連絡を受けると軍を反転して魚鱗の陣形を取り、反時計回りに進み始める。
翔馬の軍は、魚鱗の陣形に戻り時計回りに進んでいる。
そして、翔馬の軍と火鬼の軍は、正面からぶつかる。
火鬼の軍は、翔馬の軍を切り裂いていく。
翔馬の軍は、2つに引き裂かれると火鬼の軍の後ろにつき1つになる。
火鬼の軍は反転する。
翔馬はその隙を見逃さない。
翔馬の軍は、強引に前進する。
そして、火鬼の軍を突き抜ける。
翔馬の軍はそのまま前進して逃げる。
前進を続けると雑鬼の軍が鶴翼の陣形で待ち受けている。
翔馬の軍は魚鱗の陣形で突撃する。
すると雑鬼の軍は、翔馬の軍を包むように鶴翼の翼の部分を閉じる。
翔馬の軍は、強引に突き抜ける。
翔馬の軍は、削られていく。
夕方には、兵が300まで削られる。
大治の軍と翔馬の軍は、見張りの兵を残して門の中に入る。
勝成が翔馬に言う
「酷くやられましたね。」
「明日は戦えそうにはありません。」
「まだ、大治の軍がほぼ無傷で残っています。これも日野殿のおかげです。」
「明日は大治の軍の補佐をするつもりです。」
「お願いします。」
勝成は翔馬はよくやったと思う。
2倍の兵を相手にして4日間耐え抜いたのだ。
佐山の陣では孟鬼の前に雑鬼と火鬼が片膝をついている。
「2人がかりで敵将の首を取れなかったか。」
「奴は巧妙でして・・・」
「まあ良い、明日は2人に町の中までの道を作ってもらうぞ。」
「それでは我々の軍は・・・」
「おまえたちを切り札と思っていたが勘違いだったようだ。最後ぐらい役に立てよ。」
雑鬼と火鬼は死を覚悟する。




