8話 菊の収入
入場税を廃止してから3か月経つ。
町への人の出入りは、廃止当初より4倍になっている。
町の建築のため、多くの人が町に集まっているのだ。
菊は影平から収入の報告を受ける。
収入は大幅に増えている。
町の塀の建設で出費が増えているのにそれを上回っているのだ。
菊は影平に聞く
「これは、商人に対する減税のおかげですか。」
「直接的には違います。建築が盛んになり人が集まっているためです。」
「宿や食事処が潤っているのですね。」
「はい、木材などを扱う商人も儲けが多いです。」
「しかし、町ができると人が去って行きませんか。」
「いいえ、ほかの町の商人が外町に店を作っていますのでさらに人は増えるでしょう。」
「外町とは何ですか。」
「新しく造られている町の部分です。今の塀の内側を内町、外側を外町と呼んでいます。」
「影平が名付けたのですか。」
「いいえ、皆がそのように言うようになって定着しました。」
「そうですか。新しい塀はいつ完成します。」
「後は門だけですので2週間ほどです。」
「外町の様子を見たいと思います。明日、案内できますか。」
「申し訳ありません、私も宗七も仕事に追われています。」
「仕方ありませんね。」
「つな殿と清音殿を連れて、見て来られてはどうですか。」
「良い考えですね。」
「では牛車の用意をさせます。」
「歩いていきます。」
「それはいけません。」
「自分の町ですよ。」
「しかし、これまでも牛車を使ってこられたではありませんか。」
「そうでしたね。影平の言う通りです。牛車にします。」
「はい。」
影平は、菊姫が少し変わったと思う。
以前より行動的になっていると感じる。
翌日、菊は俺と清音を牛車に乗せて外町を回る。
外町は内町と比べて道が広く造られている。
多くの建物が完成間近である。
清音が俺たちに言う
「人が多いですね。」
「町中で建築をしているから国中から人が集まってきているんだよ。」
俺が答える。
「商店が多いようですね。食事処も必要でしょうに。」
菊が案じる。
俺は菊に言う
「まだ土地は余っています。需要があればできてくると思いますよ。」
俺たちは外町を一通り回った後、外で訓練をしている弥次郎、千代音、達郎、美代の所に行く
4人は10人づつ兵を受け持って訓練をしている。
兵は訓練を始めてから2週間目に入っているため、それなりに動きがとれている。
彼らは、2週間の訓練が終わったら、10人の隊で旅をしながら村を回ることになる。
もし訓練の成果を発揮できなければ、犠牲者が出ることもありうる。
菊が俺たちに聞く
「兵の中にこれはと言う者はいますか。」
「動きの良い者もいますがいません。」
「私もいないわ。」
「そうですか、簡単には見つかりませんね。」
「菊、実戦を積み重ねないと強くはならないよ。」
はっきり言って兵より、仕事を請け負って戦いをする剣士の方が数段強い。
彼らは、村を回って旅をしながら強くなるに違いない。




