1話 菊攫われる
入場税を廃止してから2か月経つ。
それは、商人の税が2分減税されてから1か月経つということである。
町への人の出入りは、廃止当初より倍になっている。
町の外では塀が築かれ始めている。
町の外の土地は、商人に売られ始める。
気の早い者たちは、商家の建築にとりかかっている。
その中には、角倉もある。
町の外の塀が完成すれば四宮は倍の大きさになる。
今、四宮は建築ラッシュを迎えようとしている。
菊は、塀の建築に出費を強いられているが、収入がそれを上回っている。
商人の税の減税の効果は、まだ数字に表れていない。
俺と清音は、午前中は剣技の訓練を2人でしている。
午後、俺は魔力のコントロールの訓練をしている。
清音は、千代と日奈と3人で話をして過ごしているようだ。
菊は部屋で仕事をしている。
その菊の前に突然男が現れる。
俺は禍々しい気配に菊の所へ急ぐ。
清音は突然現れた気配にふすまを開ける。
菊の部屋には、菊の前に鬼柳儀幽が立っている。
清音は、菊と鬼柳の間に立ち刀を抜く。
鬼柳は、2人に言う
「ご挨拶ですね。私は立っているだけですよ。」
「何の用です。」
菊が言う
そこへ俺が部屋に入る。
俺と清音は鬼柳を挟み撃ちにする形になる。
俺は刀に力を乗せて鬼柳に切りかかる。
鬼柳は避けるが、俺は魔力で刀身を伸ばす。
鬼柳を袈裟切りにする。
清音が背中から切りかかるが、直前で後ずさる。
そこへ手刀が繰り出される。
俺は菊を背にする位置に移動して力の刃を飛ばす。
力の刃は、鬼柳の左腕を切り落とす。
すると鬼柳の気配が増す。
俺と清音、菊は弾き飛ばされる。
菊は頭を打ち気を失っている。
鬼柳は左腕を拾うと傷口に付ける、腕は元通りにもどる。
そして菊を右腕で抱える。
俺と清音は、菊を取られ動けない。
鬼柳は俺たちに言う
「大治の洞戸村へ来い。姫は2週間だけ生かしておいてやる。」
「すぐに返せ。ここで相手をしてやる。」
俺は鬼柳に言うが去って行く。
俺と清音は後を追うが鬼柳は菊を抱えたまま館の屋根に飛び上がる。
そこには鬼柳の仲間らしきものが1人いる。
そして鬼柳たちは姿を消す。
鬼柳は、手下の残鬼に移動しながら言う
「手筈通りに行動しなさい。」
「はい、分かっております。」
「つなと清音は腕を上げています。」
「ご安心ください。人間2人残鬼の敵ではありません。」
鬼柳と残鬼は町の外に出ると馬に乗り走り去る。




