10話 帝、結婚を認める
俺たちの行列は、町の門を通り、大通りをまっすぐ進んで城の外門に突き当たる。
達郎が門兵に言う
「菊姫である。」
門兵は大声で言う
「開門。」
木製の両扉がゆっくり開く。
100メートルほど進むと中門に着く。
俺たちは牛車を降りる。
中門を通り、建物の入り口で履物を脱ぎ中へ入る。
菊と俺、清音、弥次郎、千代音、達郎、美代は、建物の中を進む。
階段を2階登り、何もない部屋に入る。
清音、弥次郎、千代音、美代が面を外す。
菊が部屋を守る2人の兵に言う
「帝にお目通りを願います。」
兵は黙ってふすまを開ける。
俺たちは、中に入ると部屋の中央に進み、正座をする。
部屋の1段高くなったところに帝が座っている。
帝の後ろには、正虎と勝時が控えている。
俺たちは平伏する。
帝が声をかける
「面を上げなさい。菊、今日は何の用ですか。」
「ご存じだと思いますが、私はつな様と結婚しようと思います。」
俺は結婚のために国府に来たことを理解しているが、打ち合わせなしで結婚の話になり慌てる。
帝は俺に話しかける
「菊と結婚、つなは承知しているのか。」
「はい。」
俺は言葉が出ない
「菊と結婚するということは国を背負うことに等しいぞ、そなたに覚悟はできているか。」
「私は、大切な人を守るだけです。」
俺は本音を言ってしまう。
「その中に菊は入っているのですね。」
「はい。」
「菊を守るということは、国を守ることに等しいと考えます。」
「仰せの通りです。」
「よろしい、結婚を認めましょう。」
俺は冷や汗をかいている。
帝の部屋を出ると菊の部屋に行く。
俺は菊に抗議する
「姫様、いきなり結婚の話をするとは聞いていませんよ。」
「それ以外に話すことがありましたか。」
「鬼柳の話とかはどうですか。」
「そんな話はしたくありません。」
菊はそっぽを向く。
菊は清音、千代、日奈に言う
「これから結婚式の準備をしますから忙しくなりますよ。」
清音が質問をする
「結婚するのは姫様でしょ。私たちは何の準備をするの。」
千代が言う
「花嫁は4人だからよ。」
日奈が説明する
「側室も一緒に式を挙げるのです。」
菊たち4人が俺を見る。
花嫁が4人である。
俺は幸せ者なのだろうが、結婚式にお義父さんが3人である。
素直に喜べないでいる。




