8話 盗賊退治
俺たちは、角倉に3日間滞在して休むと出発する。
扶桑から国府まで牛車で10日位と時間がかかる。
1日目の夕方、寝る場所を決めると美代が陣を張る。
深夜、一つ目が3匹来るが、みんな慣れていて静かにしている。
一つ目は、しばらくすると去って行く。
2日目、川を渡るが、菊は水浴びをしない。
鬼柳の襲撃を警戒しているのだ。
2日目は何事もなく過ぎる。
3日目、商人と会うが、3人いるだけで荷物がない。
それに商人といる2人の護衛はケガをしている。
弥次郎は商人に事情を聴く。
商人は力なく話し始める
「ここから半日ほど歩いたところに森があります。」
「道は森の近くを通るだけのはずですよね。」
弥次郎が聞く
「その森に盗賊がいるのです。」
「盗賊に襲われたのですね。」
「はい、護衛2人が殺され、牛車を1台奪われました。」
「では、朝方に襲われたのですか。」
「はい、明るければ襲われないと思っていたのですが甘かったです。」
話を聞いていた菊が達郎と美代に指示を出す
「今から森に行って盗賊を退治してください。」
達郎と美代は片膝をついて言う
「仰せのままに」
2人は森に向けて出発する。
俺たちは商人と一緒にゆっくりと森に向かう。
達郎と美代が森の近くに着いたのは夕方近くである。
目の良い達郎は森の入り口に人影を見つける。
2人は、人影を見張りと判断して道を外れ、気配と足音を消して近づいていく。
人影は、男で道の方を見張っている。
達郎は、男の後ろに回ると刀で首をかき切る。
達郎と美代は森に入って行く。
2人は1人づつ、音もなく盗賊を狩っていく。
木の上で見張りをしていた盗賊が、2人に気づいて叫ぶ
「侵入者だー」
その盗賊は美代が力の刃を飛ばして始末する。
盗賊たちが駆け付けてくる。
しかし、10人しかいない。
頭目が怒鳴る
「ほかの者たちはどうした。」
答えられる者はいない。
達郎が言う
「10人程眠っていたぞ。」
「2人で俺たちをどうにかできると思っているのか。」
「退治します。」
美代が言う。
頭目が
「忌み人風情がー」
と怒鳴りながら美代に切りかかる。
美代は姿勢を低くして深く踏み込み、一瞬で頭目の間合いに入り、刀で横なぎにする。
頭目は胴を切られて2つになる。
盗賊たちは頭目をやられて逃げ出す。
達郎と美代は力の刃を飛ばして盗賊を全滅させる。
商人の牛車は森の入り口につながれている。
2人は牛車を道に戻すと道を引き返す。
日が暮れたころ2人は俺たちと合流する。
達郎と美代は菊の前で片膝をつき報告する。
「勅命果たしてまいりました。」
「大儀でした。盗賊討伐の功、のちに褒賞を取らせます。」
菊は答えると商人に言う
「この牛車は、あなたのものですか。」
「はい、奪われたものです。」
「では、あなたにお返しします。」
「ありがとうございます。これで商売が続けられます。」
商人は泣きながら喜ぶ。
商人は言う
「菊姫様の一行とお見受けします。私は四宮の杉屋の茂吉と申します。」
「四宮の方でしたか。」
「この御恩は忘れません。」
「では、町のために尽くしてください。」
「はい。」
3日目の夜は、茂吉たちと過ごす。
翌朝、茂吉たちは扶桑に向けて出発する。
俺たちは国府に向けて進み始める。




