5話 木戸屋早雲
奴国の商人と交易を認める交易手形が届き、宗七たちは動き始める。
まずは奴国の商人を紹介してもらうことである。
宗七と3人の使用人は、4人の商人に交易手形を渡す。
俵屋の壮吉は、交易手形の中身を確認して本物と判断する。
宗七は壮吉に言う
「この件は、領主の氏原勝成様にも連絡が行っています。」
「今度は、私が約束を果たす番だな。」
「お願いします。」
「私は角倉さんと取引を始めたいと思うのですがどうですか。」
「今回の件がうまくいけば、私たちは良好な関係でいられるでしょう。」
「よろしくお願いします。私共は5人の商人と交易しています。」
「紹介は1人で充分です。」
「では、一番大きい木戸屋を紹介しましょう。」
「分かりました。」
「今夜、俵屋へ来てください。」
「期待していますよ。」
宗七は、やっと奴国の商人にたどり着くことが出来る。
彼は宿に戻ると使用人たちと情報交換する。
全員、奴国の商人に会うことが出来ることが判る。
宗七は、鬼柳儀幽が治める町とその町の様子、戦力をそれとなく探るように言う。
彼は必要なら鬼柳の町に行くことも考えている。
夜になり、宗七は俵屋へ行く。
俵屋には壮吉と顔をベールで隠す男がいる。
宗七は、男に言う
「私は宗七と申します。扶桑で角倉をしています。」
「私は木戸屋の早雲と言います。今回はどのような要件ですか。」
「私は鬼柳様の噂を聞きまして、ぜひお会いしたいと思っています。」
「どうしてですか。商品なら奴国の商人が交易をしています。」
「それは、商人の性です。」
「これは大変危険なことです。」
「鬼柳様は紳士的と聞いていますが。」
「それは、表向きの顔です。鬼柳様は能鬼師を操っています。」
「素晴らしいではありませんか。あの凶賊の村を支配しているのですね。」
「それだけではありません。館に能鬼師を引き入れて鬼を使役しているのです。」
「それでは、町に兵はいりませんね。」
「いいえ、国境の町ですから2000の兵がいます。」
「確かにあの町は国境にありますね。何と言いましたか。」
「佐山ですか。」
「そうです。鬼柳様が治めているのですからにぎやかでしょうね。」
「いいえ、町の人々は静かにしています。」
「なぜですか。」
「鬼柳様を恐れているからです。」
「私には、分かりません。」
「鬼柳様は奴国の影の権力者です。奴国で彼に歯向かう者はいません。」
「国には少しはいるでしょう。」
「みんな死んでしまっています。」
「鬼柳様の都合が良い方に動いているのですね。」
「あれは人ではありません。鬼です。」
「なぜそのように言うのですか。」
「以前、奴国で霊能者たちが、彼を鬼だと言って立ち向かったのです。」
「破れたのですね。」
「はい、皆殺しになりました。」
「私は佐山に行きたいのですが、連れて行ってくれませんか。」
「私は佐山に近づきたくありません。」
早雲が鬼柳をひどく恐れていることが判る。
宗七は早雲に佐山を案内してほしいと思ったが諦めることにする。




