15話 黒鬼討伐
深夜、黒鬼が再び現れる。
黒鬼は塀を飛び越え、中庭に体重を殺して着地する。
音はわずかな音がしただけである。
俺たちはいっせいに陣から飛び出す。
黒鬼は陣に背中を向けている。
弥次郎と千代音が刀に魔力を乗せ、黒鬼の両足を切る。
切断はできないが深手である。
黒鬼の動きを封じたところに清音と達郎が前に出る。
清音は目を狙って小刀を投げる。
小刀は右目を奪う。
そして、俺と美代が左右から黒鬼に迫る。
俺が左腕を切り落とし、美代が右腕を切り落とす。
黒鬼は俺に右足でけりを繰り出す。
もう足の傷が治っているのである。
俺は油断し、けりを左腕でかばうが左腕が折れる。
弥次郎と千代音は黒鬼の足の腱を切る。
黒鬼はバランスを崩して倒れる。
そこを美代が首をはねる。
しかし黒鬼の動きは止まらない。
黒鬼は両足をばたつかせる。
弥次郎が刀を心臓に突き入れると動きが止まる。
俺は用心して両足を切り落とす。
勝成たちが起きてくる。
勝成は、首をはねられた黒鬼を見て言う
「黒鬼を討伐したのですね。」
「はい何とか、討伐しました。」
俺は答える。
弥次郎は俺に言う
「油断しましたね。」
「はい、すみません。」
清音が俺の腕を見て言う
「骨折れているよ。」
弥次郎と千代音が左腕の手当てをしてくれる。
左腕は当分使えそうにない。
黒鬼の遺体は手足と胴体をばらばらに保管することになる。
頭は、帝への報告のため、俺たちが預かる。
翌日、黒鬼討伐祝いの宴が行われる。
俺たちの国府への出発はさらに翌日になる。
俺は氏原勝成からの書簡を預かる。
そして、俺たちは大治を出発する。
黒鬼討伐が知れ渡っているのか、町の人々が見送りに出ている。
黒鬼を討伐したが、鬼柳の脅威が去ったわけではない。
俺たち6人は、襲撃に警戒しながら、国府に向かう。
1日目の夕方になる。
寝る場所を決めて、美代が陣を張る。
この夜は、化け物は出ずに済む。
2日目、弥次郎が俺に聞く
「左腕の具合はどうですか。」
「少し痛むけど大丈夫だよ。」
俺が、実戦でけがをしたのは初めてである。
訓練では、ケガの連続だったが骨折はしたことがない。
骨折が治るまで鬼柳が何もしないとは限らない。
2日目の深夜、一つ目が2匹、陣の周りに来るがしばらくして立ち去って行く。
俺はケガをしているため、清音がかいがいしく世話を焼いてくれる。
清音がつきっきりで世話をしてくれるのである。
俺は、少しケガもいいものだと思っている。
3日目と4日目の夜は化け物は来ない。
5日目の午後、俺たちは国府に着く。




