7話 俺が帝?
俺たちは5人は、馬で四宮に向かっている。
日野信当と里見清嗣のことはすでに菊に伝わっているはずだ。
1日目の夕方になり、寝る場所を決めて陣を張る。
深夜、一つ目が3匹近づいてくる。
弥次郎は達郎が腕を上げているので勝てると判断する。
達郎が気配と足跡を消して陣を出て、1匹目の首をはねる。
一つ目は首をはねられたことも気がついていないはずである。
達郎は2匹目を狙う。
この時になって一つ目は達郎に気づく。
達郎は2匹目を袈裟切りにするが傷が浅い。
彼は、さらに追い込んで刀を心臓に刺して止めを刺す。
この時、3匹目が
「ぐげげげ」
と鳴いて仲間を呼ぶ。
達郎は3匹目に切りかかるが避けられる。
一つ目が鋭い爪で突いてきたところを刀を振り右腕を切り落とす。
そして続けざまに胴を切る。
一つ目は胴を深く切られ致命傷になる。
仲間の一つ目が6匹走ってくる。
俺と清音、弥次郎、千代音が陣を飛び出し、応援の一つ目を退治する。
弥次郎が達郎を褒める
「1人で一つ目を3匹倒せましたね。良い手際でしたよ。」
「はい、1人で3匹も倒せるとは夢のようです。」
達郎も機嫌がよい。
翌日の午後、四宮に着く。
俺たちの到着に門番の1人が領主の館へ走る。
俺たちは馬に乗り、歩いて向かうと町の人々が集まってくる。
「討伐おめでとう。」
「つな様、清音様、お帰り。」
土蜘蛛討伐成功の話しは、人々に伝わっているようである。
館の着くと菊と影平が迎えに出ている。
俺は菊に言う
「姫様、帝の命を果たしてきました。」
「ご苦労様です。話は中でしましょう。」
影平が言う
「つな殿、そこの御仁はどなたですかな。」
「達郎さんです。土蜘蛛討伐で役に立ってもらいました。」
「分かりました。」
影平はそれ以上言わない。
俺は、影平から叱りの言葉があると思っていたがなかった。
菊の部屋に俺たち5人は菊について行く。
達郎は落ち着かなそうである。
部屋に着くと菊が話し出す
「土蜘蛛討伐おめでとうございます。」
「弥次郎様と千代ぬ様は官6位になられましたね。」
「つな様と清音は次に功を上げれば官3位になる約束をしてもらいましたね。」
「はい。」
「そちらが達郎さんでよろしいですか。」
「はい、私が達郎です。」
「つな様、達郎さんを連れてきたということは必要な人材と言うことですね。」
「はい、目がよく、弥次郎さん並みに気配や足跡を消すのが得意です。」
「それは良いですね。」
「剣の腕も弥次郎さんに鍛えられて強くなっています。」
「分かりました。達郎さんは私たちといてもらいます。」
「お願いします。」
達郎はあまりうれしそうではない。
強引に連れられてきているのだから仕方がない。
「達郎さんは官位はいくつになりましたか。」
「官9位です。」
「ならば、官7位になってもらいます。」
「7位ですか。」
「働いていればなれますよ。」
菊は簡単そうに言う。
「ここからが本題ですが日野信当が私の命を狙い、里見清嗣が千代様の命を狙ったのは本当ですか。」
「俺たちも扶桑で植松様から聞かされただけですから詳しくは分かりません。」
「そうですか。本当なら跡目争いにも決着がつきますね。」
菊は他人事のように言う。
俺は気になり菊に聞く
「これは姫様の問題ですよね。」
「そうですが、私はつな様に帝の地位についてもらいたいと思っています。」
「えっ、帝位を継ぐのは姫様でしょ。」
「つな様が帝位を継げば国の風通しもよくなるでしょう。」
「はあ。」
俺はことが大きすぎて言葉が出ない。
「うん、それは良い考え。」
清音が言う。
「つなさんが帝位に着いたら楽しそうですね。」
弥次郎がおかしそうに言う。
俺には、帝になることに想像が追い付かない。




