17話 土蜘蛛討伐
2日目の昼前、俺たち5人は、土蜘蛛のいる林に着く。
達郎は俺たちに気配と足音を消すように言う。
彼を先頭に林に入って行く。
林の中は静かである。
静かすぎるのだ。
動物の気配がまるでないのである。
しばらく進むと達郎は止まる。
ここで待ち伏せることにする。
ここは大きな木が1本しかなく、小さな木の影に隠れることが出来るので待ち伏せに好都合である。
林の遠くの方から木が揺れ、葉が擦れる音が聞こえる。
音は少しづつ近づいてくる。
土蜘蛛は木を伝いながら少しづつ移動している。
こうやって、哀れな獲物を探しているのである。
俺たちは、気配を消して、土蜘蛛が来るのを待つ。
俺は、土蜘蛛がなかなか来ないので焦れてくるが気持ちを抑える。
待つ時間が俺には長く感じる。
しかし、昼過ぎに林に入ったのに、まだ夕方まで時間がある。
俺が感じているより時間は経っていないのである。
ついに待ち伏せている木に土蜘蛛が来る。
俺には木が揺れたのでわかるが枝が邪魔で姿が分からない。
達郎は土蜘蛛を見つけたようで指をさす。
俺は刀に力を乗せ、刃の形にして、指さす方に飛ばす。
さらに力の刃の2撃目を木に向かって放つ。
巨大なものが地面に落ちてくるとともに、その上に木が落ちてくる。
俺と清音、弥次郎、千代音の4人はそれぞれ距離を取り土蜘蛛に迫る。
固まっているとクモの糸に全員が絡まれる恐れがあるからだ。
土蜘蛛は黒と黄色のまだら模様をしている。
その体は大きく牛車より二回りは大きい。
背中には、俺の力の刃が当たったのか、裂け目ができ黄色い体液が出ている。
土蜘蛛は素早く地面を這い始める。
俺は、土蜘蛛の足を狙って、力の刃を飛ばし、足を2本切る。
弥次郎と千代音も同じことを考えているようで力の刃を飛ばすが足に傷をつけるに終わる。
土蜘蛛は清音に向かってクモの糸を吐くが、彼女は口の動きを見てぎりぎりでかわす。
清音は土蜘蛛に迫り頭の付け根に黒い牛鬼の刀かわせみ丸を突き入れる。
彼女はそのまま切り裂くことなく、土蜘蛛から離れる。
間一髪で土蜘蛛の足から逃れる。
これで俺と清音の刀は土蜘蛛に通用することが判る。
千代音が土蜘蛛に後ろから迫り、刀で足を切りつけるが歯が立たない。
弥次郎が刀に力を乗せて足を切りつける。
足に深い傷がつくが切断はできない。
土蜘蛛の体は、黒い牛鬼と同じく固いようである。
俺は刀に力を乗せて刀身を伸ばし土蜘蛛の足を切り落とす。
土蜘蛛は3本の足を切り落とされ動きが鈍くなる。
代わりにクモの糸を周囲に吐き始める。
俺は、力の刃を土蜘蛛に向かって飛ばす。
力の刃はクモの糸を切り、土蜘蛛の腹を傷つける。
清音と弥次郎、千代音はクモの糸が切れた隙間から土蜘蛛に迫る。
弥次郎は刀に力を乗せ、背中に飛び乗り背中の傷口に刀を突き立て傷口を広げる。
千代音は刀に力を乗せ、腹の傷に刀を突き立て腹の傷を広げる。
清音は再び頭の付け根を狙う。
土蜘蛛は苦しむように
「キシャー」
と音を出すと上方に向けてクモの糸を吐きだす。
クモの糸は木に絡まる。
俺はクモの糸で土蜘蛛が逃げるつもりだと判断して、刀に力を乗せてクモの糸を切る。
すると土蜘蛛は俺の方を向き、クモの糸を吐きだす。
俺はぎりぎりでかわして土蜘蛛に迫る。
そして、黒い牛鬼の刀うぐいす丸で八つの目のある顔を引き裂く。
清音が頭を切り落とすと土蜘蛛は動きを止める。
達郎が俺たちに聞く
「土蜘蛛をやったのですか。」
「そうだ、達郎のおかげだ。」
「次郎、敵は討ったよ。」
達郎は泣き出す。




