9話 土蜘蛛対討伐軍
頼之は、林を焼いてしまうことを思い浮かべるが、考えを消す。
林を焼くことは重罪である。
たとえ土蜘蛛の討伐とはいえ、林を焼けば、無能とそしられ罪に問われるだろう。
それだけではなく、九条家は没落するだろう。
しかし良い案は浮かばない。
これ以上、兵に探らせても犠牲者を増やすだけである。
副官が頼之に聞く
「もう一度、探らせますか。」
「いや、結果は見えている。」
「しかし情報がありません。」
「情報はある。」
「あるのですか。」
「土蜘蛛は兵に気づかれずに襲ってくることだ。」
「確かにそのようですが・・・」
「明日、全軍で林に入る。」
「無謀です。」
「このままでは兵の士気にかかわる。今のうちに全軍で戦うぞ。」
「分かりました。」
副官は、頼之に従う。
翌朝、頼之は兵たちに大声で言う。
「土蜘蛛を倒して仲間の敵を取るぞ。」
「各自、隣の者を監視し合え、隣の者が消えたら土蜘蛛の攻撃だ。」
「その時は矢の雨を土蜘蛛にくれてやるのだ。」
兵は
「おー--」
「やるぞー」
と士気は高い。
頼之は今ならやれると確信する。
彼を先頭に林の中に入って行く。
副官が頼之に
「後ろに下がってください。先頭は危険です。」
「どこにいても同じだ。このほうが士気が上がる。」
「はい。」
副官は黙る。
討伐軍が全員、林に入ると土蜘蛛が動き出す。
一番後ろにいる者を2人からめとり、音もなく木の上に吊り上げる。
また、2人からめとる。
軍は林の中で陣形を保てず、ばらばらになっている。
土蜘蛛は気づかれずに兵をさらっていく。
しばらくしてある兵が後ろから足音がしないことに気づく。
後ろを見ると誰もいない
「襲撃だー」
彼は声を上げる。
みんなが振り向く、すると後ろにいるはずの兵がいない。
頼之は
「弓隊、後上方撃て。」
300以上の矢が一斉に放たれる。
しかし、何も起こらない。
「円陣、組め。」
頼之を中心に兵が円形に集まる。
そこへクモの糸のようなものが飛んできて、兵を2人からめとる。
2人の兵は林の中に引きずられてゆく。
いまだ、土蜘蛛の姿は見ていないのに100人以上がさらわれている。
頼之は、土蜘蛛の元へたどり着く方法を考えついている。
それには兵の犠牲が必要である。
再び、クモの糸のようなものが飛んできて、兵をからめとる。
「皆の者、その者の後に続けー」
兵は林の中を引きずられていく。
みんな、その後を走って追って行く。
そして、大きな木にたどり着くと兵は木の上に吊り上げられていく。
頼之は、兵たちに指示を出す
「その木を撃て。」
弓隊が矢を放つ、矢は吊り上げられた兵ごと木に刺さる。
しかし、土蜘蛛の姿は見えない。




