3話 誤った依頼
よろず仕事斡旋所の依頼は、2組の剣士が引き受け、大牙の討伐に向かったが2組とも帰って来なかった。
国府と鳴尾村の間の街道は、黒い牛鬼の討伐軍が行と帰りで大牙の被害を受けているため、未だに大牙の仕業だと思われている。
大牙退治の賞金は金貨2枚になる。
しかし、すでに3組の剣士が帰って来ないため仕事を受ける者はいない。
そんな中、2人組の魔法剣士が仕事を受ける。
次郎と達郎である。
特に達郎は夜目が聞くためにフクロウの達郎と呼ばれている。
2人は、国府から1日歩いたあたりで戦闘の痕跡を見つける。
付近を調べると大牙の骨にわなを仕掛けた跡を見つける。
彼らはここで剣士たちが大牙と戦ったと断定する。
昼間のうちにわなを仕掛け、休みながら夜を待つ。
しかし、深夜になっても大牙は姿を現さない。
何かが飛んできて次郎に当たり、絡みつく。
次郎はもがくが取れず、地面に倒れる。
達郎は林の中に巨大なものを見つける
「次郎、林の中に何かいるぞ。」
「そいつが剣士を倒したんだ。」
「次郎、逃げるぞ。」
「俺はだめだ。」
達郎は刀で次郎に絡みついているものを切ろうとするが切れない。
彼は力を刀に乗せて強化して絡みついているものを切るが少しづつしか切れない。
下級魔法剣士には大きな力は出すことが出来ない。
次郎が引きずられ始める。
次郎が達郎に言う
「逃げて、このことを伝えてくれ。」
「ダメだ。一緒に逃げるぞ。」
達郎は、次郎を引きずっているつなのようなものを刀に力を乗せて切り始める。
少しづつ切る間も2人は林に近づいていく。
彼は、つなのようなものを切ることに成功する。
次郎を引きずり、這いながら、林から離れる。
しかし、林の中の化け物はひものような何かを飛ばしてくる。
再び、それは次郎に絡みつく。
次郎は達郎に言う
「俺はだめだ。お前だけでも逃げてくれ。」
「いや助ける。」
「お前が死んだら誰がこのことを知らせるんだ。」
「・・・」
「早く逃げろ。」
「お前とずっとうまくやってきたじゃないか。」
「それも今日までだ。」
達郎は泣きながら、地面を這って逃げていく。
彼が街道までたどり着いたころ、林の中から次郎の悲鳴が聞こえてくる。
よろず仕事斡旋所に達郎が駆け込んでくる。
妙齢の受付嬢は、怪訝な顔をして聞く
「どうしたのですか。次郎さんは?」
「次郎は死んだ。あの依頼は間違っているんだ。」
「どういうことですか。」
「相手は大牙ではない。林の中にいる巨大な化け物だ。」
「話を聞きますので、中に入ってください。」
受付嬢は達郎を事務室に通す。
達郎は、依頼受付の担当者と話す
「大牙の仕業ではないということですが。」
「そうです。林の中に巨大な化け物がいるんです。」
「どのような化け物ですか。」
「分かりませんが、何かつなのようなものを飛ばして獲物を捕らえています。」
「フクロウの達郎さんに見えなかったのですか。」
「林の中は暗くて影しか見えませんでした。」
「次郎さんは、その化け物にやられてしまったんですね。」
「そうです。助けることはできませんでした。」
「分かりました。役所と協議します。」
依頼受付の担当者は、達郎に金貨1枚を渡す
「これは、何ですか。」
「情報料です。間違った依頼で犠牲者を増やすところでした。」
達郎は、よろず仕事斡旋所を後にする。




