1話 鬼柳の提案
四宮に戻っても、俺と清音の生活は変わらない。
午前中は、清音と剣術の稽古をしている。
以前は清音の動きに対応できなかったが、今では彼女の動きについて行ける。
まだ、勝ったことはない。
午後は、清音はのんびりとしている。
俺は、弥次郎と剣術の稽古をしてボロボロになったり、魔力のコントロールの練習をしている。
菊は、俺と清音、弥次郎、千代音を部屋に呼ぶ。
彼女は俺たちに話す
「今は何も起きていませんが、必ず何らかの動きがあります。」
「襲撃ですか。」
「分かりません。この期間にそれぞれ腕を磨いてください。」
「分かりました。」
菊は近いうちに何かが起こると考えているようだ。
日野信当たちは、菊姫の処分と邪魔なつなへの対処について話し合っている。
しかし、良い意見はなく時間だけが過ぎていく。
「良い意見は出ませんかな。」
「鬼柳殿ではないですか。」
鬼柳儀幽は突然現れたが疑問に思う者はいない。
「化け物を使ってはどうですか。」
「化け物ですか。」
「つなは、黒い牛鬼を倒したそうですね。」
「そうです。討伐軍でもかなわなかったものを倒してしまったのです。」
「なら、化け物に人を襲わせ、討伐が必要になるようにするのです。」
「それでは、犠牲者が出ます。」
「必要な犠牲です。」
「しかし・・・」
「化け物がつなを始末したら、私たちで化け物を始末しましょう。」
「黒い牛鬼でも通用しなかったのですぞ。」
「それより強い化け物を用意するだけです。」
「用意できるのですか。」
「私にお任せください。」
「お願いします。」
信当たちは、頭を下げる。
彼らが頭を上げると鬼柳はいない。
それから1週間後、国府に向かう街道で、商人の荷物用の牛車が発見される。
牛車には、人も牛もいない、荷物だけがそのままになっている。
また、翌日、街道わきで旅人が野営をした跡がそのままになっているのが発見される。
旅人の姿はない。
被害は、国府と鳴尾村との間で起きている。
国府の役所は、大牙の仕業と見て、大牙退治をよろず仕事斡旋所に依頼する。
金貨1枚の賞金に剣士の3人組が仕事を引き受ける。
3人は国府から1日歩いたところで野営する、
深夜、大牙が2匹近づいてくる。
2人が1匹ずつ大牙を狩ると30匹ほどの群れに囲まれる。
「ちょっと多くないか。」
「おじけづいたのか。」
「冗談言うな。」
3人は背中合わせになり、大牙の襲撃に備える。
大牙が向かってくるたび、刀で切りつける。
夜明け近くになり、大牙は去って行く。
3人は一晩で10匹の大牙を狩る。
「10匹、狩ったな。戻るか。」
「まだ20匹ぐらい残っているぞ。」
「もう一晩、粘るか。」
「そうだな。」
3人は、狩りを続けることにする。




