表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/5

覚悟


 数時間経ち日付が変わったくらいだろうか。オレは東へ歩きつづけた。

 少しだけ休憩しよう。砂漠ではどこに座っても一緒だ。適当に座る。


 真っ暗な中歩くのは想像より過酷だった。

 暗闇の中を一人歩いていると不安に襲われる。


 シュタイン家を追放され、オレには何もない。この身一つだ。

 仮に無事に砂漠の街までたどり着いたとしてもなにができる。


 戦闘もろくにできないオレにはなにが出来るのか。

 借金にこれから先の見えない生活。考えるだけで俯いてしまう。


 先程の覚悟はどこにいったのか。

 所詮オレは負け犬なのか。



 【今日の格言】

 今日一日のみを生きよ。過去に囚われるな。人間には"今"しか時間はないのだから。


 残借金:1億G(所持金1万G)


 出るのはため息と空腹でなるお腹の音だけだ。

 負の感情が頭の中でぐるぐるとかけまわる。

 

 『ビジネス書』を開けば何か情報が得られるかのしれない。

 再度『ビジネス書』を開く。新しいページが光っている。口に出して読み上げる。


 『悩みは漠然なもの。最悪のケースを想定してお化けを見つけよう。お化けも正体がわかれば怖くない。』


 オレの今の悩みは何だ。紙は持っていないから指で砂に書いてみる。


 「・借金1億G→返せないと奴隷として売られる。」

 「・これからの生活が不安→金が底をつくと宿にも泊まれず野宿生活。→金を稼げば生活は出来る。」


 冷静に書き出すと、改めて現状は詰んでいると思う。

 最悪のケースを考えると、人として最低限の生活は送れないかもしれないが死ぬことはないんだと気がついた。

 

 「そうか。オレは死なないんだ。だったら死んだらどうしようと考えるのは無駄なだけだな。」


 少しだけ心が軽くなった気がした。

 脚の疲れも取れた気がする。


 オレは立ち上がりあるき出した。




 数時間歩いただろうか。疲れたと空腹以外は何も考えられない。

 視界が霞んできて、脚も砂に取られる。限界だ。


 目の前には松明が何個を迫っていている様に見えるが幻覚だろうか。



 「おい兄ちゃん。こんなところで何をしている。」


 目を開けるといかつい格好をした男たちが蠍に乗ってオレを囲んでいる。

 ああ。ここで殺されるかもしれない。捕まって奴隷として売られるかも。


 「ボス、こいつビビってますぜ。」


 心のなかではビビりまくっている。多数に無勢だ。襲われればひとたまりもない。


 「そう脅かすんじゃねえ。おい兄ちゃん大丈夫かよ。」


 ボスと呼ばれた男が発言した男をぽかっと叩く。


 「いえ。あまり大丈夫ではありません。気分が悪くて…」

 「そうか。砂漠病かもしれないな。砂漠の街まで乗せていってやるよ。オレことはボスと呼んでくれ。」


 ボスが倒れたオレを抱えて荷馬車に乗せてくれた。ボスが指示を出すと蠍は荷馬車を引いてぐんぐん進んでいく。


 「兄ちゃん、これを飲め。少しは楽になる。」


 ボスが飲み薬を渡してくれた。信用して良いのだろうか。


 「なに毒じゃねえよ。お前を殺すならもうやっている。」


 たしかにそうだ。オレを殺すメリットなんてなにもないだろう。


 「ありがとうございます。飲ませていただきます。」


 薬を一気に飲み干すと幾分か体が楽になった。まだ立ち上がれないがボスと話をする。


 「すごく楽になりました。オレの名前はレオンハルトです。助けていただきありがとうございます。」

 「ああ。いいんだ。オレは冒険者だ。こうやってパトロールも兼ねて仲間と走ってるんだ。」


 ボスたちは冒険者みたいだ。見た目は盗賊の様な見たことのない格好をしているが、いい人たちらしい。


 「冒険者って稼げるんですか。」

 「やめときな。兄ちゃんみたいなひょろひょろがやる仕事じゃねえ。」


 ボスの言うことにぐうの音も出ない。

 だが、オレは1億G稼いで自由を手に入れると決めたんだ。


 「兄ちゃんも何か訳アリみたいだな。オレで良ければ力を貸すぜ。」

 「ありがとうございます。助けてくれたお礼はさせていただきます。」

 「そう気にするな。たまたま走っていたところで兄ちゃんが落ちていたから拾っただけだ。」


 ボスが豪快に笑う。少しだけ話をしただけで彼が仲間から慕われている理由がわかった気がした。


 「だが気をつけろよ。この数年、砂漠の街は移民が入ってきて治安が悪くなっている。悪さするやつも増えているから、簡単に他人を信じないことだ。」

 「そうなんですね。気をつけます。」


 砂漠の街が見えてくる。どんどん大きくなっている。

 すごく大きい街だ。


 「オレたちはもう一走りしてくる。兄ちゃんは宿を取ることだな。入ったらすぐ左手に宿はあるぜ。また会おう。」


 オレがお礼を言うとボスたちは蠍を走らせて砂漠に消えていった。


 命拾いした。砂漠病という存在すら知らなかった。

 今日は休もう。明日から仕事を探して稼ぐんだ。


 宿に行くと、宿泊料金が3000Gと飯代500Gと提示された。しょうがない体調も万全ではないし泊まるしかない。

 今1万Gしかないから、三日も持たないな。


 明日から一旦冒険者として頑張ってみよう。

 弱くてもダンジョンの下層階であれば倒せるはずだ。


 ベッドに寝っ転がり『ビジネス書』を開く。

 先程浮かび上がってきた文章から何も変わっていないみたいだ。


 ページが新しく読めるタイミングが気になるが、今同行できる問題ではない。

 まずは生活費を稼ぐ。それだけに集中しよう。


 『ビジネス書』を閉じるとすぐに寝れそうだ。

 想像以上に疲れている。体力を万全にして明日から頑張ろう。


====================


 【今日の格言】

 『悩みは漠然なもの。最悪のケースを想定してお化けを見つけよう。お化けも正体がわかれば怖くない。』


 借金:1億G

 所持金:6500G→所持金10000Gー3500G

 残り日数:364日

====================


ここまで読んでいただき、ありがとうございます。


「面白かった。」

「続きが見たい。」

「頑張って更新して!」


と思った方は、ページを離れる前に

下にある☆☆☆☆☆をタップして、作品の応援をお願いいたします!


面白かったら「星5つ」あんまりだなと思ったら「星1つ」

正直に感じた気持ちで押してくださいね!


重ねて、ブックマークもお願い致します。


何よりも励みになります!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ