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Story9「悪魔に売った魂」

純の中で揺れ動く天使と悪魔の心、その葛藤と今後どう向き合ってゆけば良いのだろうか・・・。彼は何度も何度もそう自分に問いかける。

俺は悠々自適で且つ、快適な日々を送っていた。自分自身がわずか数か月前に

犯してしまった大きな罪の意識ですら、何処か遠くへと忘れてしまうくらいに。

何もしない毎日が、つまんないどころか、他人が稼いで来た金を使っては

悠々と暮らしていけるじゃね〜かっ。俺ってある意味最高かもっ!

そんな、優越感に満たされる気分にまでさせられていた。


何も大きくなんかやんなくても、毎日が楽しいじゃね〜かっ。

努力や苦い思いを、自分から買って出なくても、充分に幸せになれるんじゃね〜かっ。


所詮、世の中なんて細々と苦労して、真当に生て来たヤツらの方こそが、不幸を

背負ったままに死に逝くんだよっ。そして悪い事ばかりしている連中こそが、

いつも美味しい思いをしてるんだっ。煮え湯を飲まされるのは、必ず細々と簸ら

真面目に生きて来た連中ばかりじゃね〜かっ。

俺は不幸に死んで逝ったソイツラを、今迄にどれだけこの目で見て来た事かっ・・・。

それは勿論・・・、俺自身の親でさえもだっ・・・。


俺はクソ真面目でお人良しで馬鹿な親の生きかた等、決して認めたりしないっ。

俺自身にとって合理的で且つ、価値の感じられる生き方を存分に選ぶだけさっ。

その為には手段を選ばないっ。それが例え、世間のモラルに反していようが一向に

構わないさっ。俺はもう・・・俺自身をそこまで追い込んでしまう何かに、憑り付

かれてしまったんだからっ・・・。その居心地を、このまま楽しむしかないっ。

3人をそれなりに働かせ、そしてその銭で生活をする。儲けの一部はアイツらには

渡すが、それは微々たるものだ。しかしアイツらはそれなりに、物価の安い故郷へ

俺の口座から送金し、現に故郷でも有難がられている。だから最早、誰もここには困る

者などいないんだからっ。


ただ一つだけ問題があるとすれば、皆が一斉に外へは出られないと言う事実だけだ。

もしも天災や人災が起こっちまえば、マズい問題にもなりかねない。つまりそれは

アイツらを無事に助け出してやれる保証なんか、何処にもないと言う事にも繋がる。

でもそれは、ある意味仕方のない事なんだっ。今の俺は、例え救える命が目前に転がって

いたとしても、きっと誰も救いだせないんだからっ。俺にはそんな余裕も力もないん

だからっ。そして例えアイツらを助け出せなかったとしても、又それによって俺が追われる

身になったとしてもだ。

今のこの生活は、今迄のどの時代に生きて来た俺よりも、悠々自適だけれど、その逆に起こり

得る可能性の中には、一気に壊れ逝く脆いガラスの様な危険性をも、同時に含めているのだ。

だから本当の所はそんな俺自身こそが、一番死と隣合わせに生きているのかも知れないっ。


<ああ〜ダメだっ、また悪い病気が現れ始めたっ・・・。>


この際他のヤツらの事なんか、考えないって決めたはずなのに。例え何かが起こったとし

てもアイツらの命なんかより、俺自身の立場を優先的に考えなくてはならないっ。

それを一番解っているはずなのに、俺の中にある人間としての脆い部分がそれら全てを

邪魔しているとでも言いたいのだろうかっ。


近隣の手前、部屋の中の会話でさえ、少しでも大きな声を出す訳にはいかないっ。

そして勿論、交替でしか外には出られないっ。


だからっ・・・。


<偶にはアイツらに、精のつくモノでも食わせてやるとするかっ。>

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