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Story6「不法出国」

ここまで来るともう後には引き返せないっ!ただ実行の時を静かに待つ純、其々の思いが交差しあう妖しくも険しい命がけの出国へ。

とりあえずは、俺にそっくりなヤツラを3人見つけ出した。結局の所この世には

自分にそっくりなヤツが、3人いるとは言うけれど、何だよっ、俺を合わさる

と4人もいたんじゃね〜かっ(笑)しかしジョーがきっかけでここまでよく似た

連中を集めて、俺は一体何をしようと言うのか・・・。それはとりあえず

日本へ戻ってからの、お楽しみとしよう。


俺達はその村の青年を車に乗せて、ドニーの村へ戻る事にした。

国境の様子は、来る時点である程度把握出来たし、何とかコイツを積んでも

見付からずに超える事が出来そうだ。念の為、俺達だけではマズいと言われ、

その青年の保護者、つまりあの只ならぬ気迫男が、一緒に同乗する事となった。(笑)

そうして俺達は、ドニーの村へと再び旅だった。そして

国境も何事もなく無事に通過し、夜明け迄には、村へと戻って来られたのだ。


ドニー「おかえりなさい。ああっ、おじさんこんにちは。」


ドニーの母「ああっ、お久しぶりです。妹は一緒じゃなかったの?」


男「アイツにはまだ何も話してませんよ。もしもこの事を知ったら、相当に

テコズリますからね。」


ドニー母「そうねっ・・・。」


男「これは、姉さんの差し金だったんですね。だがそれも仕方がない。

金の為ならいつかは、妻もこの事を受け入れ、納得するでしょう。

しかし今は無理だと判断した末、勝手にコイツをここへ連れて来たんだから

俺も同罪ですよ。」


そう言って男は、青年を車から降ろした。



俺はその時又もや、良からぬ悩みを抱き始めた。この辺りの連中は矢張り人間より

も金が大事だと言うのかっ、それ程までにして、金が欲しいと言うのかっ。

そんなためらいの気持ちを、必死で堪えていると・・・。今度は青年だっ!青年が

突然話始めた。



青年「父さんそれは違います。僕はお金の為に連れて来られたんじゃなく

僕の意思で、ここへやって来たのです。確かに母さんの承諾は得ていません。

しかし、もう僕も大人です。僕の人生は、僕自身で選びたい。村に燻って生活し

ているのはもうたくさんなんだっ。でも父は賛成しても、母はきっと反対する。

それを解っていて僕の意思で、母さんには伝えなかっただけなんだ。

もっと広い視野を身につけたいし、お金も稼ぎたい、何より村以外の世界を

死ぬまでに、一度くらいは見ておきたいんだ。


<もしかしてあの男は、青年の父親だったと言うのかっ・・・。>


父親(男)「おっおいっ・・・。」


青年「純さんごめんなさい。父はお金が欲しくて、僕がアナタにお金で買わ

れた様な言い方をしたんだ。これはアナタがお金で買った訳じゃなくって

アナタに日本で仕事をしてみないかと言われ、僕自身が本当にやってみたい

とそう思ったからです。きっとドニーも同じだと思います。」


純「そっかっ、ならっ・・・」


青年「ああっ、しかし待ってください!お金を返して欲しいと言われる事も承知です。

でもどうぞお願いします。僕の村や、このドニーの貧しい村や家族達を救う為

だと思って、僕が貰ったお金はそのままにしておいてください。」


純「当然じゃないかっ、それはオマエ達の給料の先払いなんだからさっ。」


青年「有難う御座います。」


純「だが・・・その代りと言っちゃなんだが、オマエ達全員に頼みがある。」


青年「ええっ、それはなんですか?」


純「いいかよく聞けよっ。オマエ達皆でドニーと青年が、無事に日本へ渡れる

手筈をするんだ。しかしオマエ達には、手続きの申請に使える程の金は

現に持っていないだろう。だがもしもオマエ達が、無断でこの国を上手く出ら

れる方法を、すでに知っていたとしたならば話は別だが・・・。

俺はオマエ達が正規のルートで、日本に入れる手続きまではしてやれない。

その理由を簡潔に言えば、時間の無さと、もう一つはオマエ達のバイタリティ

を試すチャンスでもあるからさっ。」



そうは言ったモノの、俺の心の内は、実際はそうじゃなかった。もう俺には

手持ちの金など殆ど残っていない。だからコイツらをまともな形で、日本へ送り届ける

手段は得られないからだ。そして早く日本へ帰って、俺の計画を遂行しないと

これからの金さえ、危うく得られなくなっちまう。

だから今は、そうするしか無いんだっ。俺は心の中で、そう叫び続けていた。



純「だが・・・オマエ達にそんな高度な計画が、遂行出来るのだろうかっ・・・

心配だなっ。」


俺は態とそんな風に、上目線な口調で伝えた。そうしてないと俺にはこれ以上方法が

思い付かなかったからだ。ここでコイツらを、その気させられないと

計画は、全て台無しだからさ。しかし・・・、もしも出航する前に見付かっちまうと

コイツらは間違いなく射殺されてしまうだろう。

・・・そして俺も捕えられる。でもまず俺がそれに怯えていては、何も出来やしないっ。


<だからこれが俺自身の、精一杯の決断なのさっ。>



父親「解った・・・私達が何とかしよう。」


純「じゃっ、おやっさんを信用するぜっ、見当を祈る。」


父親「ああっ、任せておけ。」


純「そ〜だっ、まだオマエの名前を聞いてなかったなっ。」


青年「僕はティオ」


純「よろしくなっ、ティオ。」


ジョー「よろしく、ティオ。」


青年「よろしくね。」



取り合えず、ティオの父親の計画が決まり次第、俺は船を見送りジョーと

二人で帰国する事にした。

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