Story2「迷わず俺を探し出せ!」
異国の地で、自分とそっくりな人物に出くわしてしまった純。とんでもない閃きのせいで思わぬ方向へと、進まざる得なくなってしまう。
俺にそっくりなヤツなんて、ふざけるなっ!そうは思ってみたものの・・・。
待てよっ。よくよく考えると、これは使えるんじゃないかっ。
そこから俺の思考回路は良からぬ方向へと、走り出してしまったのだ。
<そうだ!何も侵害とまで、思わなくても良いじゃないかっ。
俺にそっくりなら、いっそそれを利用しない手はないっ。>
俺は片言の英語を使って、その運転手に話しかけた。
純「おおいっ、唐突だけれどオマエっ、日本へ来てみる気はないかっ?」
運転手「日本?行き成りそんな事を言われても困る。
それ以前に何なんですかアナタは・・・。」
純「ああっ、申し遅れましたっ、実はこのようなモノです。」
俺はそう言って名刺を差し出した。以前お笑いのネタに使おうと思い、作って
置いた黄金の名刺・・・。しかし外国人の運転手が、それを読める訳がないだろう。
だが俺は解っていながら、その男へと名刺しを差し出したのだっ。
何故ならその名刺が、キラキラと黄金に光っていたからさっ。
<勿論そんなモノ・・・メッキに決まってるじゃね〜かっ!(笑)>
しかし・・・その名刺。見た目だけには、ご立派な名刺に見えるのさっ!
光りモノに惹かれると言う事実だけは、万国共通なんだよなっ!
これをチラつかせて、ついて来なかったヤツなど、今まで何処にもいなかったぜっ!
人は見掛に騙されるんだ。俺はそれを良く知ってるから・・・。っとでも言ってみようか(笑)
しかし・・・まさか、本当についてくるとはねっ。(笑)
とにかく俺はその運転手の男を、日本へ連れて帰る事に決めた。そう思いとりあえずは
数か月間、日本に滞在出来る準備だけはさせて・・・。
しかし待てよっ、このまま真っ直ぐ日本へ帰っちまったら、何かが勿体ない気がする。
それに俺はもう日本を捨てて、こちらへやって来たんだから、しっぽを巻いて逃げ
帰ったような、格好の悪い事なんて出来やしないっ。とその時だっ。
閃光が、俺の脳裏を貫いたっ!
あっそうだっ、ついでと言っちゃ何だが、他の国々も周って俺のそっくりとまでは
いかないにしても、良く似た連中を数人探し出して、日本へ連れ帰ろうじゃないかっ。
我ながら、中々滑稽な名案だと思った。
俺は安い宿を借り、運転手だった男を部屋へと呼び寄せた。
純「そう言えばまだ、オマエの名前を聞いてなかったなっ。」
運転手「はい。ジョーと言います。」
純「へえ〜、ジョーかっ、カッコイイ名前じゃん。」
運転手「ありがとう。」
純「とりあえず、よろしくっ。ああっそれからまだしばらくは日本へ帰らない
つもりで放浪をする予定なんだけれど、そっちはどう?構わないっ?」
運転手「ええっ、大丈夫ですよ。」
純「了解っ。ああっそれと、これからはオマエの事をジョーと呼ぶよっ。
そして、俺の事はじゅんでいいからねっ。」
ジョー「解ったよ、じゅん。」
<そして俺はジョーを引き連れ、まだ見ぬ『俺に似たヤツラ』を、探す旅に出たのさっ。>
ある山間に差し掛かった所に、小さな村を見つけた。ジョーが言うにはその村は古くから
ある村だそうだ。その村に興味を持った俺は、少し立ち寄ってみる事にした。
そのせいか丁度、面白い儀式に出くわせたのだ。
<俺にそっくりな面を被った連中が、輪になり踊っている・・・。>
それはあまりにも自分と似過ぎていて、滑稽だが笑えるはずもない。早速村人を捉まえ話を
聞いてみると事にした。どうやらその祭りは、古くから伝統のある特有の儀式らしい。
勿論俺はその村に、少し興味を持った事は言うまでもない。
<もしかすると、この中から俺に似たヤツラを、見つけ出せるかも知れない。>
そう思っていると、儀式も終わり村人は皆、面を外し始めた。
とその時、年の頃は俺よりも少し若い気はするが、俺と見間違うクラスの青年を
見つけた出したのである。俺は迷わず、その青年をスカウトする事にしたのだ。
しかしその青年は、なかなか思う様に首を縦には振らなかった。
そこで俺はどうすれば良いのかを、持ち前の悪い頭で必死に考えた(笑)
<あそっだ、金を握らせれば良いんだ・・・。>
俺はその青年の腕を慌ただしく掴み、ポケットの中でくしゃくしゃになった紙幣の束を
青年にしっかりと握らせた。そして強気に出た。
純「俺はこの村が、買える程の大金を持ってんだぜ!オマエはそれに興味がないって言うのかよっ。」
青年「そりゃこの村は貧しい、僕だってお金は欲しい。でも僕は大家族の長男だから家族を
捨てて日本へはいけない。」
純「何言ってんだよ。オマエが日本で稼げばオマエの家族だけじゃなく、この村だって
救ってやれるんだぜっ。それでもオマエは俺と来ないと言うのかっ?なら悪いが他を当たるよ。
その代り前払いの給料は返して貰うぜっ!」
青年「そっそれは・・・。」
純「ふん?今、何か言ったか?」
青年「ああああっ、お金は欲しいよ・・・。」
純「そんな勝手な話が何処にあるんだよっ。この金は俺のだぜっ。さぁ〜返すんだ!」
そう言って俺は、青年を振り払い金を奪い返した。
青年「僕・・・行きます。」
純「はぁ〜?」
青年「僕っ、アナタについて行きます・・・。」
俺はニヤリ笑みを浮かべ・・・。
純「そっかぁ〜、じゃっよろしくなっ!」
笑顔でそう言うと・・・俺はその青年に、もう一度しっかりと金を握らせた。
<この国の物価は可也安い。田舎へ行けば尚更だ!俺のハシタガネがこんな所で生きるとは
全くもって思ってもみなかったぜっ!>




