Story(the MOON)16「願う幸せ」
逃亡を謀る純とジョー、人里離れた場所で新たに
秘かな暮らしが始まろうとしていた。
何処まで逃げたのだろうかっ。気が付けば俺達は、森の中の小さな山小屋へ辿り着いていた。
もうここまでくれば追っては来れないだろう。俺はジョーに告げた。
純「ジョー俺達、ここで一緒に暮らそう。そりゃここは山奥だし大した物はないかもしれ
ないけれど、それはまぁ〜生活してみればなんとかなるさっ!」
ジョー「・・・はいっ。」
純「そうだなぁ〜、テーブルやベッドなら森の中の木を使って造ればいいしっ。後は食糧かっ。
とりあえず何かはあるはず、食えそうなモノを明日一緒に探してみよっ。」
ジョー「・・・うん。」
純「ほらっ見てっ、こうやって火だって熾せるんだしっ。」
ジョー「凄いっ・・・。」
純「今夜はもう疲れたね、そろそろ寝ようかっ。」
ジョー「うん。」
何を持ってかジョーは、その後もしばらく炎をじっと見詰めいていた。
それはこれからの平穏を願う気持ちからか、それとも何かに追い詰められようとする
前触れからの不安感なのか・・・。その時の俺にはそれさえも全く解らなかった。
夜が明けて二人の新しい生活が始まった。以前と違う事と言えば、今の二人は恋人同士
もう何からも縛られる事もなく、そして何からも追われる事がなく。
そんな清々しい気持ちの中、この日々がずっと続けば良いっ。ただそれだけを胸に抱き
日々を送るつもりだった。
純「ジョー、洗濯手伝うよっ。」
ジョー「ありがとう。純さんは優しいね。」
純「以前は色々と辛い思いもさせてしまったしさっ。これくらいはお安いご用さっ(笑)」
ジョーはニッコリと微笑んだ。
純「あっそうだっ!後で山の反対側から見える村へ行ってみよう。
何か生活に必要な物が、手に入るかも知れないっ。」
ジョー「うん。」
二人はその時、午後から山の下に見える村へ行く約束をしたのだった。
それがこの後の二人の運命を、大きく変えてしまう事も気が付かないままに・・・。




