Story(the SUN)15「俺は騙されていたのか?」
the SUNとthe MOON 15話以降は二つに分かれるStoryをお楽しみください。
純はキツネにでも抓まれた様な形相でその状況を受け入れられずにいた。
俺はここまで成り下がってしまったんだっ。今更俺自身を正当化する気なんか、もう何処にも
残っちゃいないんだし迷う必要もないだろう。例えこのパスポートが偽物だったとしても
この後何かが起ろうとも、もう何も恐れる必要なんてないんだからっ。
それは俺の中のある一部分が、開き直りそうさせたのだと思う。
俺は荒々しい手つきで、もらったばかりの封書を開けた。と、そこには・・・。
「こっこれは・・・。」
その封書の中には、ジョーの居場所が書かれてある便箋が入っていたのだ。
<もしかしてこれは、ジョーに会いに行けって事なのかよっ。>
気が付けば俺は航空券を持って、そのまま飛行機に飛び乗っていた。
勿論ジョーに会う為に、
<一言でいいっ、ただジョーに謝りたいっ。>
俺の胸中は、今はそんな気持ちでいっぱいいっぱいだっ。
空港へ着くと、あの老人の知り合いらしき人物が出迎えてに来てくれていた。
俺は多くは語らず、迎えの運転手の行くがままに任せた。
一時間程走った頃だった。とそこには、大きく聳え立つは門構え。
<ここは一体っ・・・。>
そう思ったものの、到着するまで俺は何も聞く事も無く、ただ黙っていた。
車が門の中をしばらく走った後、豪邸の入口の前に止まった。
<なっなんと、これは立派な豪邸なんだっ!>
俺は何も事態を把握出来ないまま、豪邸の中へと連れてかれた。
純「いったいここは?」
迎えのモノ「しばらくここで、お待ちください。」とそこには・・・
入口には見事なまでの彫刻が施され、ステンドグラスの窓に淡い光が差し込んでいた。
<これは夢?>
そんな錯覚を覚えるかの様な光景に、俺は思わず息を飲んだっ。
しばらくして、階段の上からひとりの女性が、ゆっくりと降りて来たのだ。
その顔はステンドグラスからの逆光で、ハッキリとは見えないっ。
<誰?>
そこに立っている女性は・・・。
純「ジョー?ジョーなのかっ?」
ジョー「はいっ。」
ジョーが会釈をして、俺の傍へと近付いて来た。
純「いったい、どうなっちまってしまったってんだっ。」
ジョー「純、今からアナタに全ての事をお話します。」
そう言ってジョーは、俺を白いテラスの見える部屋へと案内した。
その部屋は日本間で言うと何畳敷きだろうかっ、とにかく詳しくは解らないがおよそ30畳以上は
ありそうな部屋だ。勿論立派だがその部屋はお世辞にも、俺には落ち着くとは言い難い雰囲気を
醸し出していた事だけは言う迄もないっ。何故こんな部屋にジョーが・・・。
ジョー「実は私、この家の主の娘なのです。」
ジョーの言葉に一瞬、俺は耳を疑った。
だってオマエは、貧困街でバスの運転手をしていたじゃね〜かよっ。
そんなヤツが何故、こんな立派な家の娘?そんなバカな話がありえる訳がないっ。
これはきっとジョーからの復讐なんだ。俺のせいで強制送還されるハメになっちまった訳
だから、それも無理はないだろう。俺がそんな事を心の奥底で考えていると・・・
ジョー「私の父は大きな油田を持つ富豪なのです。私は幼い頃から厳しい教育を受け
親に従い続けて参りました。しかしそこには自由が全くなかったのです。
だから私は常に自由を追い求め、生きて来ました。しかしその夢は簡単には叶いません。偶然
とあるきっかけであの街へボランティアの名目により、訪れる機会を与えられました。
とその時、こっそりと逃げだしたのです。そして私は髪を切り、あのバスに乗車してあの場所で
働いていたと言う訳なのです。そして純さんと出会ったのでした。」
純「ははっ、じゃぁ〜俺はすっかり騙されていたんだっ。」
ジョー「はい、ごめんなさい。」
純「それじゃ、俺が釈放されたのも、ジョーが金を積んでくれたからなんだっ。」
ジョー「いいえ、それは・・・。」
純「いいえって、他に理由があるとでも?」
ジョー「ええ〜。」
そう言って、ジョーは意味深な表情を浮かべた。




