Story14「追い求めて」
何もかもを失ってしまった純、
そこへ又あの謎の老人が現れジョーが既に
帰国した事を知った。
そしてある物を老人から突然手渡され、何が何だか
混乱する純。
彼の運命は果たして吉と出るか凶とでるのか。
俺は来る日も来る日も、あの暗い檻の中の生活と同じ絶望の中を彷徨っていた。
疲れ切った身体は衰弱し、日毎に枯れ果てて行く様が俺自身からも伺えた。
嘗てのこの場所の住人達は、今はどうなってしまったのだろうかっ。
もうひとりの俺達は、いったい何処へ行ってしまったと言うのだろうかっ。
そんな少し以前の生活ぶりを思い浮かべると、ふと我に戻る事が出来だった。
あの時一緒にいたジョーは、いったい何処へ行っちまったと言うのだろうかっ。
もしかすると、あの後ジョーは彼の、ではなく彼女の国へ強制送還されたとでも
言うのだろうかっ。そう思うと俺は突然、部屋中を探さずにはいられなくなった。
「ジョー・・・、何処にいるんだよっ。さぁ〜っ隠れてないで出て来てくれよ。」
やがてその声は、叫びと嘆きに変わってった。ジョーが何処にもいない・・・。
何故だろう、俺ってヤツは俺自身しか愛せなかったナルシストだったのに
何故だろう気がつけば、ジョーの事ばかり思い浮かんでくる始末。
そ〜だっ、今考えれば最後まで俺を信じて着いて来たヤカラは、ジョーたったひとりだけだった。
それなのに、俺は平気でジョーを裏切っちまった。
こんな事してる場合じゃないっ!早くジョーを探さなくては・・・。
そう思ってるといてもたってもいられなくなって、慌てて部屋を飛び出してった。
あの老人はいったい何処へ?だと言って手掛は何処にもないっ。
それでも俺は毎日毎日手掛かりを得る為だけに、闇に輝く煩い街を彷徨い歩き続けたのだった。
<ちくしょ〜、何も見付けられない。何処にもいないっ。
いったいジョーは何処へ行っちまったんだっ。>
諦め掛けてアパートへ帰ろうとしたその時だ。偶然あの老人の車が、アパートの前に止まった。
「あ〜っアナタを探してたんだっ。」
そう言って俺は縋る様に、老人の車へ駈け寄った。
老人は、それを解っていた様な顔で俺をじっと見た。
老人「純さん、アナタに大切なお話があります。車の中へどうぞお乗りください。」
そう言って老人はドアを開けた。俺は吸い込まれる様に、車の中へと乗り込んだ。
車の中で老人は又あの時の様な、静かに落ち付いた声で語り始めた。
老人「アナタに、話さなくてはならない事があります。
どうぞそのまま楽にして、私の話を聞いていてください。」
純「はぁ〜はい、解りました。」
緊張する俺は、少し深呼吸をして自分を落ち着かせた。
老人「アナタが雇っていらっしゃったジョーさんの件ですが、すでに帰国されています。」
純「何故アナタがそれを?」
老人「先程のお約束です。」
そう言って老人は、口元に人差し指を押しあて頷いた。今のは黙って聞いていろって意味なのかっ。
仕方がなく俺は、ただ黙ったまま頷いた。
老人「ここに一枚の航空券がございます。勿論これは妖しい
モノではございません。正規のルートで購入したごく一般的な航空券です。
これを使うも使わないもアナタ次第。」
老人はそう言った後、俺に一枚の航空券を手渡した。それと同時に、一枚の封書も手渡された。
そしてその後は、今迄何事もなかったかの様に、俺は忽然と車から降ろされた。
この封書は何だろう。この航空券をどうしろってんだ。
俺はあれ以来、パスポートも持っていないと言うのに。
老人「あっ忘れる所でした。」
そう言って老人が振り返り
そこで俺が手渡されたモノは、正真正銘の水沢純のパスポートだっ。
<いったい何が、起こったてんだっ。>
その状況を全くもって把握出来ていない俺は、しばらく呆然とアパートの前に
立ち尽くす事しか出来ないでいた。




