Story12「暗い檻の中で」
突然思いもしない展開へ巻き込まれてしまった純。
暗く寒い獄中で彼は只管
後悔と人生への諦めの念が渦巻き始める。
しかしその時、とある男が彼を訪ねて来た。
男は果たして一体??
俺は捕えられてしまった。頭の中が一瞬真白になった後の事は、深く覚えては
いないが・・・唯、それよりどうしてこんな事に。
俺自身の心の中では、その事を当然の報いだと知りながらも、だと言ってそんな現実
には全く納得などしている訳ではないっ。殺風景な牢獄と言う檻の中で、只管妙な
後悔ばかりを繰り返していた。
<ジョーは、あの後どうなっちまったんだろう。俺の計算には一ミリの狂いさえも
無かったはずだと言うのに、一体何処で歯車が噛み合わなくなっちまったんだっ。>
俺はいくら考えても、思い当たる誤算が見付けだせないでいた。・・・。
それなのに何故?真実を知り得る人なら、数人しかいないはずだと言うのに一体誰が・・・。
もしかすると俺は誰かに、嵌められたとでも言いたいのかっ。
もしそうだとしたら、一体誰なんだっ??
いやっそれより今は、ここから一刻も早く外へ出る事だけを考えるべきだっ。
しかし暗い牢獄の中にいると、返って色々と考えちまう。全く困ったもんだぜっ。
最後にジョーが俺を好きだと言ったあの言葉は、一体何だったのだろう。
夢か幻か・・・。しかしジョーがいくら女だとしても、俺には到底それを理解出来る
程の余裕などましてやそんなモノ何処にもないっ。つい最近までずっと男だと信じて疑わず
一緒に暮らしきた人間が、しかもまして俺にそっくりな人間が、俺の事を好きだと言った
としても、それはとても無理があり過ぎる。
俺の気持ちは、どんどん散漫になっていった。
何を考える冪が先決かっ、何を行動すべきが先決かっ、全く解らないまま
ただ時だけが流れて行った。
しばらく時が過ぎて・・・。
もうどれくらい経ったのだろう・・・。気がつけば時だけが流れてしまってて
俺の中でも以前の事など、どうでも良くなってしまっていた。もう何も思い出せない・・・。
しかし、もうその必要もないのかも知れない。
獄中のただ寒い檻の中で、来る日も来る日も同じ事ばかり考えて過ごしたせいなのか
気が付けばいつの間にか、何もかもがもうど~でも良くなっていた。
もうど~にでもなればいいさっ。
もう俺の人生は、終わっちまったんだっ。今更後悔した処で後戻りなど出来やしない。
そんな状況の中、突然俺の元へ面会に来た人間が・・・。いったい誰なんだろう。
勿論気分は乗らないが檻から連出され、一つの小さな部屋へと入る様に指示された。
部屋に入ってから、面会に来たその客とやらを、俺はじっと睨んだ。
年の頃は、70歳近い初老とでも言うのだろうか、身なりのキチンとした
なかなかの紳士だっ。
(果たしてコイツは・・・、いったい誰なんだっ。もしかしてコイツが俺を陥れたヤツなのかっ。)
俺は睨み通しながら、ただ黙ってそんな事をずっと考えていた。その時、老人が小さな
声で話し始めたのだ。
老人「すみませんね~っ、少し手違いがありまして、アナタに多大なご迷惑をお掛けしてしまって。」
純「迷惑??そんな事よりなぁ~教えてくれよっ。いったい何故こんな事になっちまったんだよっ。
オマエはその全貌を、知っているんだろっ?」
老人「確かに私は・・・全てを仰せ使わせて戴いております。」
純「そんなんじゃ解んね~よっ。もっと解り易く説明しろよっ、こっちは時間がないんだっ。」
老人「アナタにはもうしばらく、ここでお待ち願いたい。」
純「おいっ!話はまだ終わって・・・・・・。」
そんな話の途中で、俺はまたあの暗い檻の中へと戻されてしまったのだった。




