Story11「悪夢と現実」
突然全く予期せず現実を突きつけられた純、
そして同時に崩れゆく運命。ただこのまま
翻弄されて行くしか方法はないのか。
彼はその場に茫然と立ち尽くすしかなかった。
ジョーが突然、俺の胸に飛び込んで来た。その事実を把握する迄にどれくらいの
時が流れたのだろうかっ。わずか数秒かっ、それとも数分なのかっ
俺の頭の中は、一瞬にして真白になった。ジョーとは一年暮らして来たが
そう言えばジョーに触れた事は、今迄に殆どと言っていい程無かったのだ。
俺の胸に飛び込んで来たジョーの身体が、何処となく柔らかい気がしたっ・・・。
<もしかしてジョーは・・・女?、嘘だっそんな事ありえるわけがね~っ。>
ジョーは女だと俺が気付いていなかった事に、逆に気が付いていたのだろうか。
俺がずっと今まで男だと思って扱って来た事も、服装や下着までもをこの一年
全て俺のモノを使わせていた事も・・・。
それはジョーがただ黙って俺に服従し、従い続けたと言う証しなのだろうかっ。
なんて残酷な事をしてしまったんだっ。そう思うと、居た堪れない気持ちになった。
しかしこんなにも俺に、顔やスタイルがそっくりな女。それを思うと恐怖心ですら
感じずにはいられない。しかしこれから俺はどうすれば良いんだっ。今は全く頭の中で
良い考えが浮かばないっ。
俺は自分と同じ顔を持つ女に、愛されていると言うのかっ。
それは悪夢なのか悲劇なのかっ、ただそれは喜びではない事だけは確かだっ。
俺は自分自身にそっくりな顔を持ったヤツと、愛を育む気など到底ないっ。
だと言ってこの一年間、俺の事を慕い只管忠実に生きて来たたったひとりの人物は
ジョーしかいないんだ。そんなジョーを俺は果たして意図も簡単に、切り捨てるなんて
出来るのだろうかっ。
とっその時・・・。玄関のインターホンが鳴り響いた。・・・そして外から
「すみません警察ですが、少しお話を聞かせていただけませんか?」
と言う声が響いた。
俺はとっさに自分の身の安全よりも、ジョーの事を考えていた。
純「ジョー早く隠れるんだっ!」
俺はそうジョーの耳元で囁いた後、冷静を取りもどしつつドアを開けた。
純「こんな時間に、何かあったんですかっ??」
刑事1「実はこの辺りで、色々と良からぬ噂を耳にしましてね~っ。」
純「そ~なんですかっ!」
刑事2「水沢さんに少しお話を聞かせてもらおうと思いましてっ。」
そう言って二人の刑事は俺の身体の隙間から、何度か部屋を物色する様に覗き見ていた。
純「しかし・・・こんな時間に・・・ですか?」
刑事1「取り敢えず、一緒に来て戴きましょうか。」
刑事2「その前に、部屋にもうひとり人がいますね?」
純「いいえっ、僕だけです。」
刑事1「実はカーテンに写る、二つの人の影を見ましてね。その事を少し調べさせてもらえる
と有難いんですがっ。」
とその後、俺の頭の中は突然真白になってしまった。もうダメだっ、うまく逃げおうせる方法
なんて浮かびやしね~っ。ただ俺はなす術もなく、その場に立ち尽くしていたのだった。




