1.光の勇者アレク
アレクは激怒した。
俺は勇者アレク! かっこいい戦士だ。ついでにすごい魔法も使える。
今から魔王を倒しに行くのに、王様が100円と銅の剣しかくれなかったから俺は怒っている。
おい、金を出せ。もっと持ってるだろ。俺は王様に剣を突きつけた。
俺は牢屋に入れられた。
くそ、なんで俺が牢屋に入らなきゃいけないんだ。俺は勇者だぞ。
「キャー! お兄ちゃんかっこいい! 素敵だー! 最強だー!」
俺を褒めたたえる声がする。
こいつはジェル。俺の弟だ。さみしがりやの甘えん坊だから俺が一緒にいてやらないとダメなんだ。
だから牢屋も一緒に入った。
「お兄ちゃん今日もハンサムだー! 立ってるだけでもかっこいいー! 呼吸してるのがかっこいいー! 最高だー!」
ふっ……また今日もジェルが褒めてきたぜ……尊敬される兄でいるのも大変だな。
しかし孤独な男の旅に家族は不要だ……俺は光の戦士アレクだからな!
俺はチートだから牢屋を出た。
旅の途中でジェルがワンちゃんを連れてきた。ワンちゃんはいいぞ。特に柴犬だといい。
だからこれは柴犬だ。
「わんわん」
ワンちゃんが子どもを連れてきた。子どもを物語に入れると読者が感動するって聞いたから入れてみた。よくわからん。
「わんわん」
たくさんの強敵を倒してついに魔王の城にやってきたぞ!
ワンちゃんと子どもは危ないから家に帰った。魔王の城は危険がいっぱいだからな。
でも俺は勇者アレク! すげぇ能力もってるからぜんぜん平気だ。
「キャー! お兄ちゃん強いー! かっこいいー! 素敵ー!」
ついに現れたか魔王! うーん、なんて強いんだ。困ったぞ。お兄ちゃん泣いちゃうぞ。
その時、ジェルが爆発して死んだ。
爆発で建物が崩壊して魔王も死んだ。俺も死んだ。
そして誰も居なくなった……
光の戦士アレクの活躍で魔王は無事倒されたのだった。
ワンちゃんと子どもは助かったからよかった。