赤髪と買い物①
東の森を出る頃にはもう日は沈みかけていた。
散々森の中を引き摺り回された衛兵どもはもうボロボロである、やはり何処かの貴族のとこの者らしくこんな事してただで済むと思うなとか何とか騒いでいたがゼクトに蹴られ物を言わなくなった(生きてはいる)。後の処理は衛兵のゼクトがやるらしい。私は二人と別れ家に帰った。ばっちゃんに仕事をサボるなと言われたが依頼は一つも来ていなかった様なので適当に誤魔化しておいた。
翌日、朝食をとっているとカトルがやってきた、昨日の衛兵どもは解雇され、貴族の権利も剥奪され牢に入れられているらしい。密猟なんかをしていた理由はシーフフォックスの毛皮は非常に高価な品なのでそれを売って得た金で来年には貴族で無くなるのを免れようとしたらしい、一度私に取り引きの場を見られそうになっていたのにも関わらず密猟を辞めなかったのはそう言う理由で切羽詰まっていたからみたいだ。棍棒男達は既に口封じされていた様だ。まったく自己中で酷い奴らだ、棍棒男達に同情は全くしないが。あの強情そうな奴らが何故そんなにペラペラ喋ったのか訊いた所、ゼクトが…と引き攣った笑みを浮かべていたのでそれ以上は聞かないでおいた。ともかくカトルが何か礼をしてくれる様なのでカトルに連れられて王都の中心街にやってきた所だ、中心街に来るのは何年振りだろうか、以前来た時とは様変わりしている。
「礼って何してくれるんだ?」
「う〜んそうだなぁじゃあランが欲しい物一つなんでも買ってあげよう。」
欲しい物一つ何でもか、何が良いだろう。
「そんなに考え込まなくても色々見て気に入ったのを買えば良いさ」
どうやら立ち止まってしまっていた様だ。
「それじゃぁ行こう!!」
とカトルが言い、私の手を取って歩きだす。勝手に他人の手を引くとかコイツにはパーソナルゾーンという概念は無いのか?振り解こうとするが割と強く握られているし何か不満そうな顔をしながら、こう言うのは男がエスコートするもんだろ、とか言ってくるわ面倒臭くなったので渋々そのままで行く事になってしまったので睨んでおいた。
最初に行ったのはアクセサリーショップだが買ってもらうにしても高価で気が引けたのと、元々興味が無いのとで何も買わずに店を出た。二軒目は服屋、三軒目は靴屋と言う具合に店を回ったがどれもそんなに興味がないので何も買わずに店を出た、ふと思ったのだがこんなに女の子らしい店を回るのは初めてかも知れない、私が着ている服も靴もばっちゃんが若い頃着ていたものばかりだ、別に不便ではないから良いのだが。そんな事を考えつつ歩いていると、通りの隅に古めかしい本屋を見つけた。
「なぁあの本屋に行きたいんだが。」
「あぁ良いんじゃないか、でも古そうだけど?」
「ああいうトコには掘り出し物があるんだよ。」
なんと無くそんな感じがするだけだが。
店に入ると中は少し埃っぽく古本ばかりの様だ、取り敢えず魔法動物のエリアを物色する。
カトルは兵法書をみている様だ、商人だろ?霊獣について書かれている本を手に取り読もうとすると、何やら紙が数枚落ちてきた、古本なのでページが取れてしまったのかと思ったが、筆跡が違うので挟まっていただけの様だ,見いてみると研究ノートの様にスケッチなども書いてある。霊獣と普通の魔法動物の違い、霊獣への昇華の条件などの考察がびっしり記されている。ウフフ.....思わずにやけてしいまいそうだ。
「どっ、どうした?いきなり笑い出して。」
ヤバ!声に出ていたみたいだ。まぁそんな事はどうでも良い。
「これみて!この本から出てきたの!研究ノートみたい!」
「おっおう、取り敢えず落ち着け。それが欲しいのか?」
「うん!そう!」
私がそう言うとカトルは紙が挟まっていた本を取り寝ていた店主と思われるおっさんを起こし、お金を渡し、店主に何か囁いてからこちらに戻り、紙を本に戻し私に手渡す。やったぜ!本当に掘り出し物があったぜ!カトルに礼を言わなくては!
「ありがとう!」
私がそう言うとカトルは少し驚いた様な顔をして、おう、と言いつつ本棚の方をみた。
「そっそう言えば、もうそろそろ昼だし飯にしないか?」
確かにお腹が空いてきたので、そうね、と返事をしつつ私達は本屋を出た。