奇妙な獣
残酷描写有りです注意して下さい。
アンナと話した後、夕食をご馳走になって馬車で送って貰い家に帰った、結局アラン様は戻ってこな来なかった、まぁアンナと楽しく話せたので正直言って忘れていたのだが。
今日は何処に連れて行かれる事もなく平和です、と云っても明日にはパーティーに参加せねばならず少し憂鬱だ、最近アルブスとシーフフォックスの相手が出来ていないので散歩にでも連れて行こうか。
アルブスは白銀の翼と黒真珠の様な冠羽を持つナイトホークと言う魔法動物だ、シーフフォックスは光魔法で姿を消せる魔法動物で密猟されそうになっていたのを保護したのだ。
いや、シーフフォックスはそのうち野生に帰さなければならないのであまり懐かれるのも困るのだが…アルブスと打ち解けてしまって、アルブスだけ連れて行くと言う訳にも行かないだろう。
アルブスとシーフフォックスを呼ぶ、散歩は東の森でいいだろう、ついでに薬草も採れるからね。
ばっちゃんに一言言ってから家を出る、ばっちゃんは意外にも心配性なのか、何処に行くのかとか、いつ帰るのかとかいつも訊いてくる、私はもう子供じゃ無いんだがな〜
アルブス達はもう待ちきれないみたいで私の服を引っ張っている。
「ふふっそれじゃあ行こうか!」
外に出るとアルブスは白銀の翼で大空に舞い上がりアクロバット飛行を繰り返している、シーフフォックスは傷が完治していないので私が抱えて行く、東の森の入り口まで着くとアルブスを近くまで呼び寄せる、あまり高い所にいられると木々で見えないので様子が確認出来ないからね。
さあ、私は薬草を探そう!シーフフォックスを抱えながら何時も薬草を採っているポイントに向かう、アルブスも後からついて来る。
あれっなんかいる?双頭のヘビ、バイデントスネークか?何かに絡み付いてるのか?金色の毛皮、ランドパンサーかな、そんな風に思いつつ観察していると……パキッと音がした、枝を踏んだか?バイデントスネークとランドパンサーが振り返る、ミリタリーフロッグの顔も一瞬見えたと思ったら消えたぞ!光魔法を使うミリタリーフロッグだけじゃなく他の魔法動物も…上を飛んでいたアルブスとシーフフォックスが騒ぎ出す、何!どうした!!とか思ったら横にある木が溶けた!シーフフォックスが光魔法で騙くらかしたのか?
その瞬間頭を殴られた様な衝撃が走る、いや殴られてない怪我はしてない。
頭に三種類の声が響いて来る「「「タスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテ」」」
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痛いのはこっちだよ!!ヤバイ意識が朦朧としてきた…クラクラする…立てない。
消えそうな意識の中目を開く、そこにいたのはランドパンサーとミリタリーフロッグの頭、胴体と前脚もランドパンサー、後脚はミリタリーフロッグ、尾はバイデントスネークの胴体を持つ混ぜこぜになった様な魔法動物だった。
ソイツが複数の口を開く、喰われる…でも体は動かないさっきから頭の中に変な声が響いて破裂しそうだ…
(主人よ!起きて下さい!!主人!!)
頭に別の声が響いて来る、聞いたことのないはずの声なのに声の主が不思議と誰だか分かる、それは有り得ない答えなのだが…
「アルブス!!」
私は立ち上がる、アルブスの声が聞こえたおかげか、少し頭痛が治った。
奇妙な魔法動物が私に直ぐに噛みつかなかったのはシーフフォックスが立体映像で分身を作っていたからか、未だ怪我は完治していないのに無理をさせてしまったみたいだ。
(主人!大丈夫ですか!!)
私はうなずく、とにかく逃げなければ、シーフフォックスを抱きかかえ走り出す。
(ランちゃん起きた!しんぱいした!)
頭に小さな女の子の声が響く、この声はシーフフォックスを保護した日に王都で聞いた声だ!あの声はシーフフォックスだったのか、と言うか何で私魔法動物の声が判るんだ!!
まぁ今はそんな事置いといて逃げなければ!アルブスがミリタリーフロッグの頭から飛んでくる酸やバイデントスネークの頭が吐く炎を風魔法で防いでいるが、全ては捌けない、飛沫だが酸がかかる痛い!!少しかかっただけで服を溶かして肌まで到達している、だが我慢しろ!!立ち止まれば死ぬ、シーフフォックスが見せる映像もそろそろ慣れてきた様で効果を示さない、このままじゃ追いつかれるぞ!どうする、どうする!考えろ!考えろ!
後ろの奇妙な魔法動物が立ち止まる、諦めたのか?そんな考えを嘲笑うかの様にソイツが使ったのは風魔法、ミリタリーフロッグの跳躍力と合わさり一気に私に追いつき私を引き倒す、シーフフォックスは投げ出され木に激突する、アルブスはバイデントスネークが吹く炎で近づけない、ああ私はここで死ぬのか…怖いし悔しいが私には医療位しか出来ないのでなす術はない。
ランドパンサーの頭が私の首に齧り付く。
私の首から鮮血が噴き出す。
アルブスの声が聴こえるも、もう遅い。
私はそこで意識を手放した。