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魔法動物診療所!  作者: 麺職人
17/26

ウィングキャットとヴァッサル上位公爵家

感想、ご評価のほどよろしくお願いします!

 次の日の朝、予定通り馬車が迎えに来た。

豪華絢爛とはこの事を言うのだろう、緋く塗られた車体に金のグリフォンの意匠が施してある、馬車を引いているのは白いスレイプニルだ、スレイプニルは八本脚の馬の魔法動物で、高い戦闘能力を持ち昔から軍馬として重宝されている。


馬車から執事の様な男性が降りて来ると頭を下げ。


  「お待たせ致しました、ジゼル殿、ラン殿」


ジゼルとはばっちゃんのことだ、私も普段ばっちゃんとしか呼ばないので偶に忘れる。

執事さんの手を借り馬車に乗る。

馬車に乗り込むと中は外装程華美で無く木目が見えて何だか落ち着く、それでも気品があるように感じられる。そんな事を考えていると馬車が走り出した。

未だ朝早く人通りが全くない街道を馬車が激走する、みるみるうちに景色が変わって行くが馬車は全く揺れない、何かの魔法が掛けてあるのだろう。

15分もしないうちにに公爵邸に到着した、馬車を引いているのにこのスピードとは、グレンより速いのでは?門をくぐり馬車で3分程進む、庭広すぎない?もう一回いうよ庭広すぎない?スレイプニルで門まで15分歩いたら2時間以上だ、そのスレイプニルで3分だぞ!3分!

因みにいろんな植物とか噴水があったようだが馬車が速すぎて何にも見えんかった。


そんなこんなでやっと御屋敷の入り口に着きました、ドアが物凄く豪華で驚きましたよ〜今後も設備にいちいち驚いていたら疲れそうなのでもう何も気にしない事にした。広い廊下を執事さんに案内されながら進んでいると中庭で土いじりしている金髪碧眼の女の子が居るが着ている服は使用人のそれでわ無くお嬢様と言った感じだ。

私が見ているのに気がついたのか顔を赤くして噴水の後ろに隠れてしまった、恥ずかしがり屋なのだろうか?


部屋に着くと豪華なベッドの上に白い体毛に黒い翼を持つウィングキャットが蹲っていた。


  「奥様、獣医殿を連れて参りました」


執事さんが言う、公爵夫人は小さく、よく来て下さいました、と言ってウィングキャットを心配そうに撫でている。

ばっちゃんが触診を行う、私はここ数ヶ月の様子を公爵夫人に訊こうと思う。


  「すいません、ここ2ヶ月ほどのこの子の様子をお聞かせ願えませんか?些細な事でも構いません」

  「ハイ…えっと2ヶ月前にはいつもより鳴くことが多かったです、それと体を家具によく擦り付けていました、そして一回脱走してしまいましたが直ぐに戻って来ましたその後少し食欲が落ちたようですが一週間程で元に戻りました、暫くするといつもより食べるようにもなったので心配してなかったのですが、少し攻撃的な性格になってしまいました、そして昨日になって食欲が全く無いようで、お腹も痛いのか蹲って余りうごかないのです…この子は何かの病気なのですか?」


聞いた様子から察するに、公爵夫人が気に病む様な事態にはなっていないだろう、ばっちゃんの意見も訊くと私と同じ答えの様だ。


  「奥様、恐らくこの子は妊娠しているのではないかと」


  「妊娠…ですか…」


  「ハイ、妊娠です脱走した時に何処かでオスにであったのかと、それと今日中にでも産まれるかも知れません」


公爵夫人はおどろいたようだが、ホットもしている様だ。公爵夫人が言っていた症状は発情と妊娠の兆候だ。

ばっちゃんも触診で確認しているので間違いないだろう。


  「フフッ驚きましたがこの子の赤子が見れるのですね、楽しみです」


心配で青くなっていたのが一転公爵夫人は金髪碧眼の美しい顔で笑っている。

なんか誰かに似てる気がするな〜いやっ人違いだろう私の知り合いにヴァッサル公爵家みたいなロイヤルな人がいる訳がない、と言うか私普段家に篭ってっからそんなに交友関係広くないし。

そんな事を考えているとウィングキャットがソワソワし始めた、そろそろらしい陣痛がきたのか体を伸ばしていきみ始めた様だ。

公爵夫人に来ましたよ、と伝えると大丈夫なのですか、と聞いて来たが手出し厳禁だ、生き物には元々生きる力が備わっている、私達獣医が手を出すべきなのはどうしようも無い時だけだ、この場合では難産だった場合だという事を公爵夫人に伝えると納得したのか、頑張れ、と応援しつつ見守る事にした様だ。


30分ほどして第一子が産まれた、母猫が羊膜を破り、子猫を舐めると子猫は産声を上げる、その後も15分ごとに一匹産まれ、合計4匹産まれて、恐らく今産もうとしているのが最後だ。

最後の子猫が産み落とされる、母猫が羊膜を破り子猫を舐めるが産声を上げない、どうやら仮死状態の様だ、確か仮死状態の時は布で包んで…私が判断しかねていると、

ばっちゃんが羊膜を拭き取り子猫を布に包んで軽く振る、様子を確認したまた軽く振る、すると子猫は今度こそ産声を上げた。流石ばっちゃんは仕事と判断力は一流だという事を再認識する、それと同時に自分は未だ未熟者だと思う、私達獣医は命を扱うのだ、判断ミスどころか、少しの遅れで手の内から命がこぼれ出て行くこともあるのだ、さっきの様に迷う事があってはならない。

帰ったら気を引き締めて勉強し直そう。


今回はばっちゃんのお陰で全ての子猫が無事に産まれた、因みに体色は母猫と同じだ、ばっちゃんは多くの報酬が貰えるとの事でホクホク顔である。それにしても出産というものは素晴らしい事だと思う、新しい命が新たにこの世に産まれるのだ、自分の未熟さも再認識したし頑張らないと!


子猫は母猫の乳に集まり母乳を飲んでいる、母猫と公爵夫人はそれをとても愛おしそうに見つめている。

ドタドタと音がしたと思うと先程中庭で土いじりをしていた女の子がドアを勢いよく開けて現れた、


  「お母様!アリアに子供が生まれたと聞いたのですが!」


  「アンナ、お客様も来ています、走るのも大声で喋るのもはしたないですよ」


公爵夫人にそう言われて私とばっちゃんに気づいたのか、アンナと呼ばれた少女はボッと赤くなりすいません、と言ってドアの後ろに隠れようとするも後ろから来た人に引きずり出される。

現れたのは金髪碧眼のイケメンだ。


  「アンナ、隠れてばかりじゃダメじゃないか、獣医殿に挨拶しないと」


  「やっ辞めて下さいお兄様!恥ずかしいです」


金髪兄がこちらを向く、


  「今日はアリアをありがとうって君は昨日の…」


ん?昨日の?私は知らんぞ。


  「すいません、何処かでお会いしましたか?」


  「ハハッもしかして忘れたのか?面白い女性だ、僕はヴァッサル上位公爵家次男、アラン-ヴァッサルだ、昨日君に命を救われた騎士さ」


そう言えば、魔法動物にボコられた後の6人の騎士の手当てをした様な気がする、もしかしてバイデントスネークの毒にやられていた人か?


  「もしかしてあの時気絶していた方ですか?」


  「そう、君に口移しで薬を飲ませて貰ったものさ」


ばっちゃんがお前勝手に薬使ったのかという目で見て来る。


  「まぁランさんはアランちゃんの命の恩人なのね!しかも口移し!なんて偶然かしら!名前も一文字違いだし!」


公爵夫人がなんか盛り上がっている。特に最後の意味ある?


  「母上、客人の前で、いや、いつでもちゃん付けはお辞め下さい!」


アラン様(貴族の方なので一応様付け)が恥ずかしそうに言う。そう言えばアンナ様は何処に?見当たらないのだが、まぁ子猫や母猫に何もなければもう来る事は無いのでいいか。


  「そうだ!アリアに子供が生まれたお祝いにパーティーを開くのは如何かしら!ランさんも来ない?」


んん?今何て?パーティーに私が?ナニヲオッシャッテイルノデ?


  「すいません、私パーティーに来て行ける様な服は持っていないので出ることは…


  「じゃあ買ってあげるわ!」


未だ喋ってるのにかぶせて来た!!てか買ってくれるだと!庶民には荷が重いわ!!

と言うか公爵夫人、偉そうじゃなくて良い人だし、ウィングキャットのこともよく見ていて良い飼い主だと思ったけど押しが強すぎる!


  「アランちゃんも良いと思わない!!」


  「良いと思います、それとちゃん付けをお辞め下さい」


アラン様が申し訳ないという目でこちらを見て来る、あんたは母に逆らえないのか!ばっちゃんはこれから貰えるお金で頭が一杯の様で話を聞いてねぇ、誰も助け舟を出してくれないぜ!どうしよう、このままだとパーティーに出る事になってしまう、マナーも踊りも分かんねぇってのに!それを言っても教えるとか言われそうだ。


  「ねぇランさんいいでしょう?」


公爵夫人がそう言って私の手を握る、公爵夫人だぞ公爵夫人!お願いみたいなノリで言ってそうだが、命令みたいなもんだから!


そのまま押し切られて私は2日後のパーティーに参加する事になってしまった…









ウィングキャット

体長50センチ程、翼は広げると1メートル程、体色は様々な品種がありそれによって変わる。

貴族女性に人気のペット、風魔法と翼を使い空中を飛び回る。


ヴァッサル上位公爵家

フィシオゴロス王国の軍部を掌握する大貴族、スレイプニルやグリフォンなどの騎獣を騎士団に供給している。

初代国王と共に建国に貢献した歴史の古い家の一つ、領地は国の南方にあり、王家以外では1位2位を争う広さを誇る。

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