帰宅
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ドラッヘンネストで食事をとった後は何事も無く、もうお礼はしてもらったのでそのまま帰る事になった。
「美味かっただろ?」
「ええ、また来たいかな、店長も面白い人だったし」
セキトバを連れたカトルと話ながら歩く。
「そういえば、セキトバって種名だよね、これからカトルが面倒見るんだから名前でもつけたら?」
「そうだなぁ〜東の国から連れて来られたならそれに因んだものが良いな」
東の国に因んだ名前か…ばっちゃんが昔、東の国の事話してたな〜
「ねぇグレンなんてどうかしら?ばっちゃんが言うには、東の国の言葉で赤い花の事らしいんだけど」
「グレンか…いい響きだ、よし!じゃあセキトバ今日からお前の名前はグレンだ!」
グレンは名付けられたのが判ったのか大きく嘶いた。
暫く喋りながら歩いていると王都の外れの検問所まで着いたようだ。
カトルは王都に住んでいるとの事なので此処で別れの挨拶でもしようかと思ったら、カトルが、
「グレンで家まで送ろか?」
と言ってきた、歩いて2時間程もかかるのでお言葉に甘えようと思う。
「ありがとう、お願いするわ。グレンも宜しくね!」
そう言ってグレンの頭を撫でる。
問題なく検問所を出る、カトルがグレンの上に飛び乗り、私に手を差し伸べる。
その手を取ってグレンの背に引っ張り上げられ、カトルの背後に座るかたちとなった。
「それじゃぁ出発しようか、しっかり掴まってね」
カトルの後ろにいるので表情は見えないが、心なしかコイツニヤニヤしてる気がするし、この感じでしっかり掴れとは、お前に抱きつけと?ちょっと恥ずかしい気がする。
少しイラッときたが振り落とされてわ堪らない、仕方なくそっとカトルの腰に手を回すとカトルが私の手を掴む。
「ヒャッ!」
「しっかり掴れって言っただろ?」
カトルが私の手を引っ張ったせいで私の上半身がカトルの背に密着してしまった。
そのままカトルはグレンを走らせる。
コイツ…ゼッテェ許さねぇ!今すぐに抗議したいが、グレンは昼間に通りを爆走していた事から分かる様に無茶苦茶速くて喋ったら舌を噛みそうだし、体勢を変えようとしたら落ちてしまいそうでカトルの背から離れられない。
イライラを抑える為に他の事を考えよう。
ふと横を見る、普段何となく通り過ぎる景色だが馬上から見ると世界が違って見えるみたいで何だかドキドキする。
遠くを見るとアサルトクロウだろうか?黒い鳥の群れが落ちていく日をバックに飛んでいる。
10分程グレンの背で揺られているともう家に着いたようだ、本当に速い。
カトルが先に降り、手を差し出す。
先程手を引っ張られて無理矢理密着させられたい事を忘れちゃいない、手を取らずそのまま飛び降りてしっかり着地する。
ちょっとした意趣返しのつもりだったのだがカトルの奴何故か笑ってやがる、こう言う時に差し出された手を取らない事は失礼だと聞いたのだが…本当にコイツは何を考えてるのか判らない。
少しムッとしているとカトルの笑い声が大きくなる、流石に気味が悪い。
「ハハッごめん、ごめん気にしないでくれ」
確かに気持ち悪いので放って置こう、ここまで連れてきてくれたグレンに水を飲ませてあげようと思う。
水を入れた桶を前に置くと瞬く間に飲み干してしまった。
カトルの謎の笑いが治まったので、今日のお礼でも言おうかな。
「ねぇカトル今日はありがとう、トラブルもあったけどあんな風に店を回るのは初めてだったの、だからとっても楽しかった」
私がそう言うと、カトルは少しバツが悪そうに頭を掻いておう、と言った。
「じゃあ俺そろそろ帰るわ、銀髪男の事で何か判ったら伝えに来るから」
そう言ってカトルはグレンに飛び乗ると躊躇いがちに言った。
「やっぱり、何事もなくてもきていいか?」
「ええ、ほとんど依頼なんて来ないから良い暇つぶしになりそうだし」
私が応えるとカトルは、また今度、と言ってグレンを走らせ、帰って行った。
カトルが見えなくなってから家に入るとアルブスとシーフフォックスが飛びついてきた。
今日は朝から出かけていたので、寂しかったのだろうか。
「ただいま!良い子にしてた?」
そう言いつつアルブスとシーフフォックスを撫でる。
それにしてもシーフフォックスが懐いてしまうとは、怪我が治ったら野生に返すのに。
ランは少し困ったなぁと思いつつ一羽と一匹を撫でるのだった。