ドラッヘンネスト
カトルがセキトバを買い取り、そのまま昼食をとりにカトルオススメの店に向かって歩いている途中カトルに話しかける。
「なぁどうしてセキトバを買い取ったんだ?」
「あそこはいい方だったけど、大抵の見せ物小屋ってのは劣悪な環境のものが多い、もしそんな所に売り飛ばされたら可愛そうなのと、銀髪の男の狙いは判らないけどセキトバを暴走させる事が狙いだった場合のために目の届く所に置いておきたいと思ったからさ、まぁ1番は気に入ったからかな」
そんな会話をしながら歩いているとどうやら到着したみたいだ。カトルがセキトバの手綱を店頭にある柱に結ぶ。ドラゴンの置物などが並べてある結構厳つい見た目の店だ。
「ココが俺のオススメ、ドラッヘンネストだ」
ドラゴンの巣だなんて大層な名前だな、と思いつつ案内されるまま店内に入ると、そこには巨大な頭骨が置いてある。
「スゲェ、レッドドラゴンの頭骨だ!」
おっと思わずテンションが上がってしまったぜ!それも仕方がないレッドドラゴン含めドラゴンと称される魔法動物は霊獣、霊鳥のように加護と言った特殊能力は持たないがその戦力は到底人間なんかが敵うものではなく、正に災害と言った感じだ。その頭骨をこんな所でお目にかかれるとわ、魔法動物好きがテンション上がらないわけがないじゃないですか!いいもん見たぜ!
「おっ嬢ちゃんコレの良さがわかるのか?」
「勿論ですとも!素晴らしいです!」
勢いのまま答えてしまったがこのおっさん誰や?頭にタオルを巻いているムキムキもおっさんが話しかけてきた。
「ヨォ、カトル良い客連れて来るじゃないか!ガッハッハッハァ!」
「アハハ、今日も店長はハイテンションだね〜」
この人が店長なのか、とにかくお腹が空いているので席に着こうと思う。
「で、嬢ちゃんは何食べる?カトルはいつものでいいか?」
「ああ、それで良いよ」
「私はグリーンワイバーンのモモ肉のステーキで」
ワイバーンはドラゴンに近い外見をしているが、ドラゴンは四足動物でワイバーンは二足歩行で全く異なるもので、ドラゴンとは違い人間にも充分倒せる範囲のものだ。それでも危険な魔法動物なのだが。
私は魔法動物を快楽の為に狩ったり、宝飾品の為に狩ったりする輩は嫌いだが、食べることに抵抗は無いというか、この世界にいる生き物は大概魔法を使うので魔法動物だから食べないとか言っていたら肉なんて食えないだろう。人間は食わなきゃやっていけないのだ。
厨房からいい香りがして来る、空腹の身にコレは堪えるのではやくできないだろうか。
気を紛らわす為に店内を見回すと、奥の方では男性客4人がまだ昼過ぎなのにお酒を飲みながら談笑している、その手前ではガラの悪そうな二人組がこれまた昼過ぎからお酒を飲んでいる。
内装は煉瓦の壁に所々ドラゴンの絵が描かれいる。
あのおっさん本当にドラゴンが好きなんだな。
そんな事を考えているとおっさんが料理を運んでくるのが目に入る。やっと来たぜ!
「これがウチの自慢のグリーンワイバーンのステーキだぜ!」
私の目の前に置かれたステーキから煙が立ち昇る、ガーリックと胡椒の香りがたまらない。
ナイフを入れると同時に肉汁が溢れ出て来る、焼き加減はミディアムの様でほんのりピンク色が残っている。
口に含むと溶ける様に数回噛んだだけで消えていく。
「店長!とっても美味しいです!」
「当たり前だ!何しろそのグリーンワイバーンは俺が選りすぐりの個体をとっ捕まえてきたもんだからな!」
「えっ!店長が捕まえてきたんですか?」
「おうよ!肉が傷つかないよう、背後から飛びかかって締め落とすんだぜ」
ん?今、締め落とすって言ってなかったか?ワイバーンを?
コノヒトナニヲイッテイルノ?
「ああぁ俺も最初は信じられなかったけど本当だぞ」
私が混乱しているのが判ったのかカトルがニヤニヤしながら言う。
「マジ?」
「マジだ」
何ソレ一種のバケモノじゃない?
「ダッハッハ毎日鍛えているからな!」
店長がカトルの料理をテーブルに置いて言う。
いや、鍛えていても締め落とす相手じゃ無いと思うんだ、ワイバーンって。
「それより嬢ちゃんはドラゴンが好きなのか?」
「ランは魔法動物の獣医をしてるんだよ」
私より先にカトルが答える。
「魔法動物の獣医かそりゃ珍しいな!」
「そうだろ、魔法動物の事になると目の色が変わるんだよ」
何故お前が語り出すんだ、カトル。人に自分の事を語られるとなんだか気恥ずかしい。
「そんな事よりあのレッドドラゴンの頭骨はどうやって手に入れたんですか?」
そう聞くと、店長は神妙な面持ちで語り始めた。
ドラゴン
生まれつき霊獣に匹敵する力を持つ爬虫類型の魔法動物の総称。他の魔法動物と違い霊獣へ昇華する事はなく、加護を与える能力もない。生まれたばかりのドラゴンはレッドドラゴン、ランドドラゴンなどと呼ばれ、属性の違い以外個体差はないが成長するに連れて1個体1個体が独自の種になる。性別はなく繁殖行動が取れないにもかかわらず稀に発見されるなど謎が多い。またドラゴンを討伐する際に血を浴びてしまうと浴びた部分が黒ずんでいき、目眩や幻聴などの病におかされる。
グリーンワイバーン
ワイバーンの一種で風系統の魔法を使う。高い山に生息し、恐ろしい程の速さで獲物を地上から連れ去る。稀に山から降りてきて人里を襲撃する事がある。