暴走の謎
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騎士団の訓練場で暴れいたセキトバを大人しくさせて、飼い主のおっちゃんの元に連れて行く為厩舎で拝借した手綱をセキトバにつけ、カトルと共におっちゃんの見せ物小屋に向かっている。
道行く人が青い顔をして後ずさるが、仕方が無いだろう1時間程前まであの巨体が通りを爆走していたのだから。私は珍しい魔法動物を観察できてウキウキなのだが。
セキトバは先程はピンキーモスの媚薬に当てられていただけで本来は見かけによらず大人しい性質の様だ。
カトルも興味がある様で、撫でたりタテガミを手ぐしで梳いたりしている。そんな事をしながら歩いているとおっちゃんの見せ物小屋に着いたらしい。
「おっちゃん、セキトバ連れてきたぞ!」
「あっあぁありがとう嬢ちゃん達。」
「この子はどうするんですか?」
街でも騎士団の訓練場にも被害を出したのだから、このまま見せ物小屋で飼育とも行かないだろう。と言うか賠償とかは大丈夫なのだろうか?そう言えばどうしてピンキーモスの媚薬なんてものがこんな季節に?生息地も遠いはずだ。
「おっちゃん、セキトバを飼育していた所に案内してくれるか?」
「ああ、良いともこっちにだよ」
「ラン何か気になるのか?」
カトルが不思議そうな顔で聞いて来る。そう言えばカトルにピンキーモスの話はしていなかったな。カトルに媚薬の話と季節も生息地も違うと言う話をする。
「確かに気になるな」
「うん、もしかしたら誰かが意図的に仕組んだのかも」
そんな話をしていると、セキトバを飼育していた囲いについた様だ。鉄の柵がねじ曲げられているのがセキトバの力の強さを物語っている。柵の中に入り中を調べるすると甘い匂いがする食べかけの人参が落ちてる。ピンキーモスの媚薬が振りかけられている様だ匂いを嗅ぐだけで効果が出る物を食べてしまったのならあんなに暴走するのも頷ける。
「この人参はいつもあげているものですか?」
「いや、違うよウチでは干し草をあげていたんだけど、最近勝手に餌を与える客がいて困っていたんだよ」
「どうした?何か見つけたのか?」
別の所を見ていたカトルが近づいて来る。
「こっちに来るな!!」
「なっ何でだよ別に良いだろ」
「さっき言っただろ、高い魔力に反応する媚薬だって、お前に効いたら面倒くさそうだから来るな!」
カトルが一瞬悲しそうな顔をして戻って行く。
「なぁ、おっちゃんその餌を勝手にあげる奴ってのは今日も来てたのか?」
「ああ、此処最近毎日来てるみたいだ」
「どんな見た目か教えてくれるか?」
おっちゃんの話によると銀髪に黒い目で眼鏡をかけた30歳程の男の様だ、後でその男を探すよう衛兵に頼んでみよう。恐らくその男がセキトバを暴走させたのだろう。
取り敢えず匂いが漏れないよう、媚薬がついた人参を袋に入れ、密閉してからバックに入れる。
「カトル、もうこっちに来ても良いぞ」
「それで、どう言う事だか教えてくれよ」
私は分かっている情報をカトルに伝える。
「じゃあ俺からその男を探すようにゼクトに頼んでみよう」
「そうね、それが良いかも」
ゼクトなら不正などを行う心配もないだろう。
方針が決まったところでお暇しよう、もう少しセキトバを観察したい気もするが流石にもう空腹だ。
そう言えば柵が壊れているが、セキトバは何処においておくのだろうか。
「おじさん、セキトバはどうするんだい?」
カトルも同じ事が気になったのかおっちゃんに質問している。
「そっそれなんだが、私はあれがもう一度暴走するかと思うと怖くて、怖くて、だから新しく飼い主になってくれる人を探そうと思う」
本当に気の小さいおっちゃんだ、でもセキトバは大人しいし、媚薬などを摂らないように注意すれば問題ないと伝えようとすると、カトルがニヤリと笑い私の口に手をかざす、喋るなと言う事だろうか?なにがしたいんだ?
「おじさん、なら俺に譲ってくれないか?勿論タダとは言わない、言い値で買おう」
「分かりました、ありがとうございます」
「ラン、奥で金の引き渡しをするから此処で待っていてくれ」
そう言ってカトルはおっちゃんと共に奥に入って行った。
カトルはだいぶセキトバを気に入っている様だがまさか購入するだなんて、しかも言い値で、現金の直払い…
商人の息子だと言っていたがだいぶ大きな商会のようだ。そんな事を考えながら待っていると、どうやら代金を払い終えたようで二人が戻ってきた。
「それじゃあ昼ご飯を食べに行こうか」
カトルはセキトバの手綱を引きながら言う。今連れて行くのかよ!後で家に送ってもらうとかじゃないのか!
「あっああそうだな」
私は別にいいのだが、店側に迷惑ではなかろうか。そんんな事を考えつつカトルオススメの店へと向かうのだった。