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原作を改変したら殺されます  作者: 葵陽
一ノ章 カドモスクエスト
7/98

ええんやで。

少し、実験を試みることにした。私にしては、よく決心をした方だと自身を褒める。

私は小屋からはじめて、外に足を踏み出した。

今日は晴れ晴れとして澄んでいる、とても綺麗な青空だ。久しぶりに感じる新鮮な空気を、肺に取り込んでいく。鬱屈とした気分が、少しだけ消えた感じだ。ゲーム風に言えば、ヒットポイントは回復しないけど状態異常は治った、というような具合である。

私は遠目に見える町、ではなく小屋の裏手にある森、に歩を進めた。

このせかいの、アドニスという大陸はその土地の大半が森林である。森林以外であると所々に村や町があり、いちばん大きいところが王城のある都だそうだ。都は、ここから歩きで十日以上かかるらしい。商いか、よっぽど火急の用事でもない限り、庶民が都を目指すことはないとのことだ。そしてアドニス大陸からやや離れたところにある、小さな大陸にあるのが魔王城だそうだ。


魔王城ですってよ、奥様。やーね、物騒だわ。


やはりロールプレイングゲームのせかい、のようだ。残念ながら私のゲームに関する知識は、それほど深くはない。ゆえに基本的なことしかわからないがよくある魔王が居て、勇者が居て、魔王を勇者が倒すストーリーではないかと思う。ここでワタリ、つまり私が魔王の手下になったり勇者の仲間になったりすると、ネモさんが私を殺しに来るわけだ。

頼まれなくとも戦闘経験ない、魔法も武器も使えない私がお仲間に入ろうなどとは思わんわい。非力なめんなよ。

ちなみに番兵の戦闘力はいかほどか聞いたところ、そのせかいのいちばん強いキャラクターの少し上、らしい。ワタリがもしそのせかいの『主人公』を殺せるほどの戦闘力があったと仮定しても、確実に殺せるようにそう定義されているという、トンデモ設計だ。「言ってみればバグ、チートの類いのようなものだが番兵はそのせかいに参加するわけではないから、ズルくはない。」というのがネモさんの意見だ。番兵はワタリを殺すことに特化しているのであって、なにかを為すためにいるのではないのだと。

やはりこのせかいにも『主人公』がいるのだ。と私は森の入り口と小屋の間を行ったり来たりしながら、至極当たり前のことを考えていた。軽い運動のつもりだったが怠けていた身にはきつかったらしい。私は近場の、切り株に座る。硬くて尻が少し痛い。

ワタリが、私が絶対に遭ってはいけないひと。遭ったら、認識されたら殺されるひと。

定められた運命。決められた歴史を変えることはそれほど罪が深い、というわけだ。なにより勇者以外が魔王を倒すなど、本当にせかいの崩壊に繋がりかねないだろう。ゲームの内容が変わってしまう。

では、ワタリとはなんなのだろうか。せかいがこれを拒否するのであれば、ワタリが望まれた存在でないことは明白である。単なる事故、ということだろうか。


馬鹿のくせに難しいことを考えるべきではない、とも思うが。


森入口周辺に生息している小動物が、餌を求めて巣穴から出てきたようだ。私の座っている切り株に乗ろうと、リスが此方へやってくる。すると、リスが私の右足に追突した。訳が分からない、といった感じで辺りを見回した後、私にぶつかったリスは森の方へ帰っていく。やっぱり、動物にも私は認識されていないらしい。このせかいの小動物がそういう習性、ということもありえるかもだが、普通動物は人間を警戒してすぐには近寄らないものだ、と図鑑かなにかで聞いた気がする。


間違ってたらゴメンやで。


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