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原作を改変したら殺されます  作者: 葵陽
三ノ章 静閑なる窮鼠
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殺意さえあれば、容易いことだった

日本人は万物に魂が宿るという考え方をしているため、ロボットに対して敵対心を抱きにくいらしい。彼らとて、万物の一種だ。人間ではない無機物なものに愛着を持つのは、独特な感性だろう。対して一神教の西洋人は、人間体に近いロボットに脅威を抱きやすいという。人間に近いものを人間が作るのは、神への冒涜だというのが一説だ。

流し聞きした程度の知識だ、間違っている可能性もあるが。

両者のどちらかが優れているとか、劣っているとかそういう類のはなしではない。ただ、視野や解釈が広いということは決して悪いことではないと、個人的に思うだけだ。

ロボットが人間を支配する、という考えはあながち間違ってもいない。だから、『奴ら』に恐怖する感情は、とても貴重だ。



このせかいでは、逃げおおせる犯罪者が皆無である。答えは簡単、常日頃から監視されているので犯行から数秒で捕縛されるからだ。そして酌量の余地なく、刑に処される。情の一片もなく、粛々と。それでいて再犯だったときには、刑が重くなる。それが当たり前ではあるのだけれど。

よっぽど困っている場合でない限りこのせかいでは、ひとは罪を犯さない。それは一種の抑止力でもあった。

はたしてそれは、良いことなのか。それに答えられるものは皆無だろう、例え外から来た異邦人だとしても。

ひとがひとに罰を下すということは、それほどに難しい。




為衛門たち蜂起の民は、地下に身を潜めている。地下だと珪城に見つかりにくいからだろう、と芥さんは言った。恐らく、珪城の電波は地下まで届かない。昔の携帯電話が、地下だとはなせなかったと同じように。

芥さんがなぜそれを知っているのかと問えば『千里眼』はワタリだけではなく、主人公の位置をも把握できるというのだ。そうか、ワタリと主人公の接触を防ぐためだ。


「それなのに、逢わせてしまっていいのですか。」

「何を今さら。」

黒曜の瞳を有する番兵は、呆れたように言った。そしてすぐに、二の句を継ぐ。

「さて。ここまで関わってしまったのだから、お前さんも後戻りはできないぞ。今さらだが腹をくくり給え、ミフネくん。」


寒さに気づいてぼくが外を見ると雪がまた、降っている。

このせかいはあまり、晴れることが少なかった。

清廉潔白、まるで一欠片の罪も許さないというように。

それはそれは真白な雪が、毎日のように降る。


「なあに、失敗しても死ぬだけよ。」

妖しく光る黒曜が、射貫くようにぼくを見つめていた。


ああ、確信していたさ。

このひとは、ぼくを殺せるのだ。


なあに、失敗しても死ぬだけよ (◎─◎)

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