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それは、生物ではなかった。
少なくとも絶対に。
「マネキン・・・」
一体どうなってしまっているのだろうか。
さっきまでふつうに話していたのに…
いつの間にマネキンにすり替わったのだろうか。
もしすり替わっていなかったとしたらさっきの会話はいったい。
「そういえば他の人は?」
誰もいないはずがない。
岳は勢いよく病室を飛び出した。
走った。走りまくった。
「だれか〜だれかいませんかぁ〜〜!!!」
もう悲鳴にちかい声だった。
こんな声を出したのは初めてだ。
自分でも驚いている。
のどの調子がおかしい。
いや身体がおかしくなっている。
まるでだれかにエネルギーを吸い取られているようなそんな気がしてたまらなかった。
それとさっきから誰にも会っていない。
会うのは医者のマネキンや病人のマネキンだ。
手術室へむかってみる。そこがまださがしていない唯一の場所だった。
そこがいないとするとこの病院には誰もいないことになる。
さっきの看護婦はなぜマネキンになっていたのだろうか。
謎は深まる。
しかし岳は恐怖を感じなかった。
いや感じられなかった。
感じることができないのだ。何もないのだから。
岳は手術室の扉のドアノブに手をかける。
これが最後の希望だった。
もうここにいなかったら俺はどうすればいいんだ!
そして扉をそっと開ける。
せめて・・・せめて大手術をしていて医師や看護婦が全員手術室にいました、というおちにしてほしい。
していなかったら、希望が終わる。
中が見えた。
しかし、
だれもいない・・・
よく細かいところまで探した。
必死で探した。
「だれかいてくれよぉ」
応答なし。
そのときばたりと倒れた。
そして右腕がずきずき痛みだした。
「まさか・・・」
ふくの袖をまくりあげた。
そこには・・・・・・・・・・あの夢の中のときにあったものと同じ十字架になるように浮き出ている黒い点がそこにはあってしまった・・・
いたみはじょじょに強くなっていく。
「ヴぁあ・・あぁぁ・・・」
痛い。異常なくらいに痛む。
そして体が動かない。
足から感覚がなくなってきた。
足を見てみる。
この輝き・・・
それはマネキンそのものだった。
この時になって岳はやっと気づいた。
みんなこうやってマネキンにされたのだろう。
だから誰もいなかった。はじめはいたのだ。
自分はマネキンにされていく。
そのとき目の前のパソコンが勝手に起動した。
そこに映し出されたのはあの十字架になるように浮き出ている黒い点だった。




