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また、岳はもう1つのあることに気がついた。
それは、他の人を見れば容易にわかってしまった。
それは、全員に共通するものだった。
誰一人としてここにいる人たちでそれがない人はいなかった。
なんと皆自分と同じ十字架のあの模様が浮き出ているのだ。
岳は恐怖にとりつかれた。
「ここはどこだ!みんな何者だ?だれか、だれかおしえてくれよぉ〜!!!!!!」
もう岳は正常ではいられなくなった。
そして、
みんなの視線がこちらに降り注いできた。
目をつむってもわかる。
その目は・・・鋭く殺意に満ちていた。
まるで岳が獲物かのように視線は岳一点に集まっていた。
不気味に笑っている。
「「オシエテヤロウカ」」
どうじだった。
どうじにしゃべったのだ。
まるでつながっているかのように。
いやつながっているのだろう。
岳の恐怖はもう限界値に到達しかけていた。
「助けて
たすけて!
TASUKETE!!
タスケテェーー!!!!!!!!!!!!」
もう岳はあまりの恐怖で全身が震えだしている。
「うわ〜〜〜〜あぁああああ!!!!!!」
にげたかった。
もうここにいたら確実にこいつらに殺される!
しかし足が動かない。逆に座り込んでしまった。
焦りで汗を大量に出し、喉は完全に乾ききっていた。
眼は充血している。頭はきんきんにいたい。
このもうすぐ殺されるという恐怖が岳をここまでにしたのである。
「「アハァハアアハハハハハハッ!!」」
そいつらは狂っていた。
いや狂っているという語は適当ではない。
そいつらは
壊れているのだ。
それ以前にそいつらはいったい何者なのかもわかっていない。
じょじょに歩み寄ってくる。
囲まれてしまっているのでもう逃げられない。
手遅れだった。
そして、岳は死すら覚悟していた。
「もうおわりだ・・・」
目を閉じる。
すると自然に今までの楽しかったことや悲しかったこと、うれしかったことやつらいことなどが浮かんできた。
あぁ・・・いままでいろいろあったナ・・・
まだ父さんや母さんにすらさよならといっていない。
せめてでも最後にみんなにさよならだけはいいたかった。
岳は心のなかでそっとつぶやいた。
さよなら―――、と。
再び目を開けた。
視界にはやつらがいた。
岳の覚悟は確かなものになっていった。
一滴の涙がこぼれおちた。それは乾ききった土、いや砂におちた。




