16
男は拳銃を手に持った。
さっきあの人が言っていたことが脳裏に蘇る。
(サンプル01の心臓を狙って拳銃で撃て。お前の腕ならできるはずだ)
男はすぐ近くにいるがまったく気づいていないものにそっと拳銃を向ける。
心臓めがけて・・・
「よしもういくぞ」
岳は学が立ち上がるのを見ると一緒に立ちあがった。
どうやら学の疲れはもうないらしい。
やはり学は、運動神経だけはかなりいい。
ただMということだけが残念だ。
学のMということを抜けばあとは完ぺきなのに・・・
そう思いながら学の横に移動して走った。
バンッ
ドサッ
銃声と同時に倒れた音がした。
倒れたのは学だ。胸のあたりが真っ赤に染まっている。
「うぅ・・・げほっげほっ!!!」
岳は周りに警戒しながら、しゃがんだ。
「お、おい!学!!大丈夫か?」
それに学は弱弱しく答える。
「も・・・う・・・・だめ・・・だ・・」
「だめじゃねぇ!!がんばれ!死ぬなよ!!」
そういいながら岳はなにか手当てできそうなものを探した。
しかし見つからない。
なぜなら、周りには何もないのだ。
「くそ!!くそぉおおお!!!!!!」
必死にあたりを見渡す岳を見ながら学はこう言った。
「た・・かし・・・こ、これ・・を・・・・」
その声に反応し、岳は学に視線を向けた。
岳がこっちを向いたのを確認すると学はポケットからあるものを取り出した。
それは地図とカードキーと計画書だった。
「あと・・・・・は・・・ま・か・・・せ・・・・・・・・・・た・・・・・・・・」
岳はそれを何も言わずに受け取った。
「じゃ・・・あ・・な・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
学はゆっくりと笑みを浮かべると目を静かに閉じた。
なぜだろう・・・もう死ぬのに全く悲しくもなんともない・・・
そして学はそれを思ったら最後に、意識がなくなった。
岳は学からもらったものをすべて読み終えていた。
とたんに、岳は殺意のこもった目になっていた。
「ゆるせねぇ・・・」
学を殺しやがったやつを殺す。
いやここをぶっ潰す。
ここにいるものすべてを消す。
とその時、後ろから声がした。
「おやおや、サンプル01が殺されて憎いかい?サンプル02」
「・・・。」
サンプル01とはおそらく学のことだろう。
そしてサンプル02は俺・・・
「なにをそんなに黙り込んでいる?」
「・・・殺してやる」
「はぁ?」
「殺してやるっていってんだよぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」
そういって岳は振り向く。
「な・・・」
岳は言葉を失ってしまった。
「ふふふ・・・そんなにおどろいたのかい?」
「うそ・・・だろ?」
「うそではない。ふふふ・・・」
目の前にいるのは男が2人だ。
片方はどうでもいい人だ。
だがもう片方は・・・
「井川純一・・・!!!」
そう目の前にいる人のうちの片方はコンビニのあの店長なのだ。
その時、すべてがつながった。
「すべて・・・わかったよ」
「ほう?いってごらん」
岳は店長、いや井川を睨みつけながら話した。
「おまえは俺がコンビニを止めると言いに来る前に誰かと話していたな。」
「あぁ。」
「その時俺は聞いていたんだ。そのお前とホリユヤーの会話を!!」
井川の眉がぴくりと動いた。
しかし再び元に戻る。
「そのときおまえはサンプルがどーたらこーたら言ってたな。」
「あぁその通りだ。サンプル02」
「おそらくその時に8時に俺をおそうことが決まった。それと学も・・・」
「よくわかったね。」
「・・・。」
岳が黙り込むと井川が岳にこういった。
「つづけたまえ」
少しの間の後、岳はつづけた。
「あのUFOみたいなものはアメリカでつくられたものだな?」
ぴくり
また井川のまゆが動いた。
「証拠は?」
「あの計画書をみたらホリユヤーはアメリカ人らしいな。ホリユヤーは夢現実混乱機というよくわからないものを作れるくらいだ。こういう乗り物ぐらい簡単だろう?それとアメリカで極秘で作っているとテレビでも見たことがある。それで」
「君の推理は見事だ。もういい聞き飽きた」
「てめぇ・・・」
岳の殺気溢れた視線を井川は全く気にせずに隣にいた男にある命令をした。
「こいつの脳を狙って打ち殺せ」
岳は半ばにやりとあざ笑った。
「ばかなこというぜ。計画書を書いたのはお前だろう?ここで俺を殺してしまえばサンプルは手に入らなくなる。」
「ばかは君のほうだよ。サンプル02」
「なんだと・・・」
「君はまだ知らないことがあったんだよ。」
井川はつづけた。
「その計画書がプロジェクトEではなく、プロジェクトAを記してあることを」
「プロジェクトE?」
岳は真剣な顔に戻る。
「そうだ。ふふふ・・しかたがない。君はどうせサンプルになるからな。特別に教えてやろう。この計画はそもそも心臓と脳が手に入ればいいのだ。それとサンプルは2体いる。ということは片方は心臓だけ、片方は脳だけ完全な状態で手に入ればいいのだ。・・・ふふふ。もうわかったな。」
岳に殺意よりも恐怖が芽生え始めた。