10
岳は教室に戻った。
さっきの学の話が脳裏に蘇る。
「実はここの世界少しおかしいんだ」
「は?」
「なぜかよくわからないんだけどみんなに話しかけてもシカトしてくるんだ。」
岳は少し笑った。
「それはお前がMだからだよ」
学は否定した。
「ちがうんだ。お前には俺が見えているかもしれないけれどみんなにはどうしてもおれが見えてないっぽいんだ。」
学はつづけていった。
「それだけじゃない。声もどうやらきこえてないらしい。・・・もしかしたらお前も・・・」
「でも親はおれのことが分かった。大丈夫だよ。」
そう言ったが内心すこし不安になってきていた。
その証拠に手からうっすらと汗が出てきている。
「いやそれは俺もだ。」
「えっ!?」
「うん・・・」
「じっじゃあ夢はどんな夢を見たんだ?」
「なんか最初はインドみたいなところにいた。だけどそこにいる人みんな腐っていった。そのあと確かいつの間にか病院にいた。でもそこもおかしいんだ。みんなマネキンにされてってそのあと目が覚めた。」
・・・。
まったく一緒だ。
もしかしたらこいつは安全・・・?
そして岳は学、いや頼りない学を少し信じてみることにした。
「じつはおれもなんだ・・・」
「えっ?」
学は驚いた。
「まじかよ・・・」
「あぁまじだ。」
「じゃあ俺達どうなっちゃうんだ…」
「・・・」
岳は言えなかった。
予想は大体ついていた。
いや推理と言っておいたほうがいいだろう。
きっと・・・これも夢なんだ。
しかも学と同じ夢を見ている。
誰がこんな夢を見せているんだ?
そう無性に叫びたかった。
岳はそれを抑え冷静に言った。
「とりあえず俺ら以外だれも信じるな。この世界も夢だ。おそらく」
「おう!」
「じゃあそろそろ時間だからもどろうぜ」
学がどうして自分と同じ夢を見ているのか岳はわからなかった。
それとも・・・学も夢の中の仮想の人物なのか?
意味が分からず岳は体育館に行く準備をしていた。
次は始業式だ。
とりあえず準備をするものが思いつかなかったので筆記用具とメモ帳をポケットに突っ込んだ。
そして岳は体育館にむかって歩きだした。
かすかな希望を持って。




